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【BOOKガイド】墓石が語る江戸時代~大名・庶民の墓事情(歴史文化ライブラリー)~

2019年03月06日

今日ご紹介する書籍は、国立大学法人の弘前大学教授である関根達人氏が、大学生の協力も仰ぎながら、全国の約4,000もの墓石を調査し、その結果から江戸時代の身分制社会、発生した自然災害や飢饉、海運による人や物や情報の交流を解き明かす労作です。著者によると、墓石が日本に根付いたのは江戸時代より少し前のことだそうです。古墳時代という歴史の一区分があります。古墳が盛んに造られたからなのですが、その時代の歴史を紐解く鍵が古墳にあったからとも言えると筆者は考えています。著者は、古墳同様に墓石が歴史を紐解く鍵であるとして、墓石が造られ出したこの時代から現代までを墓石時代と称しています。墓石は「動かない」「多様性がある」「文字情報が刻まれている」ことから、貴重な史料になりうる、というわけです。

 

書籍名称:墓石が語る江戸時代~大名・庶民の墓事情(歴史文化ライブラリー)~

発行元:吉川弘文館

価格:1,944円

販売店:全国の書店、インターネットストア

 

書籍の概要

 弘前などの津軽地方や北海道の松前、江差、それらと海路で結ばれていた福井の敦賀、小浜、三国などの墓石を調べ上げ、人口動態や自然災害の発生、疫病の流行、物流や家族像などを考察しています。墓石の数などを調べることで、飢饉や疫病、災害による死者の数を類推し、その規模や影響を導き出しているのです。また、例えば天明の飢饉の際の死者が、弘前では平年の4.8倍もの数に上ったのに対し、松前が2.6倍に留まったのは、松前は海上輸送が盛んだったために米を外部から入手できたことが理由であると、当時の海運の実態も明らかにしています。墓石の一つひとつは歴史的な価値がなくても、膨大な数が集まれば別の意味を見つけることができると著者は説きます。

 そのほかに、墓石の形状などをとおして、大名や庶民の懐具合についての仮説をたてたり、当時の家族感や檀家制度も墓石から読み取っています。また、江戸時代だけではなく、古代から現代にかけての墓事情や、江戸時代には既に現れていたという「ペット墓」についても言及しています。両国回向院にある、徳川家綱の愛馬を弔う「馬頭観音堂」などもその例に入るのでしょうね。

 著者は現代の墓地、墓石を巡る環境(樹木葬や納骨堂などによる脱墓石化、墓じまいなどによる墓の消滅など)に対する直接的な意見は避けています。しかし一方で、21世紀を「墓石文化終末期」になるだろうとも言っています。墓石という後世にとって貴重な史料がなくなることは時代の流れなのかもしれませんが、未来に文化を残す義務もわたしたちにはあるのではないだろうか、とも思いました。

目次

「石に刻まれた歴史」を読み解く―プロローグ/

墓=墓石ではない!(墓は世につれ/現代墓石事情)

墓石から何が分かるか?(墓石と過去帳/墓石の調べ方)

墓石の造立年と保有率(墓石の変化と地域色)

墓石から分かる歴史災害(歴史人口学にチャレンジ/死亡クライシス年を探せ)

墓石に見る社会構造(墓石に現れた階層/墓石に見る家族像/墓石に現れた個性)

大名墓に込められた思い(国元の墓と江戸の墓/高野山奥之院の大名墓)

墓石に現れたヒト・モノ・情報の交流(墓石と北前船/蝦夷地の墓石)

「墓石文化」を考える―エピローグ

 

関根達人氏のプロフィール(書籍著者情報から)

1965年埼玉県に生まれる。1991年東北大学大学院文学研究科博士前期課程修了。弘前大学人文社会科学部教授、博士(文学)。

 

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