総務省統計局では毎年さまざまな統計をとっていますが、その中には家計支出の動向調査があり、全国平均と都市の規模(人口)別平均、都道府県平均と県庁所在地ごとのデータが公開されています。多くの調査品目の中に、葬儀などに関係するデータがありました。そこで2018年の統計データから、信仰祭祀(宗教施設に対する寄付や墓地の管理料、賽銭など信仰に関する費用全般)の費用、祭具墓石(仏壇、線香、墓石など)の費用、葬儀関係(宿泊交通費を除く葬儀、法事)の費用について、県庁所在地の上位10の都市を取り上げて、その理由を推察してみることにしました。なお支出額は1家庭あたりの年間平均額です。
信仰祭祀の支出
順位 | 都市名 | 金額(円) |
第1位 | 大津市 | 32,424 |
第2位 | 京都市 | 24,442 |
第3位 | 神戸市 | 21,149 |
第4位 | 奈良市 | 18,551 |
第5位 | 佐賀市 | 17,834 |
第6位 | 徳島市 | 17,365 |
第7位 | 津市 | 16,660 |
第8位 | 東京都区部 | 15,997 |
第9位 | 大分市 | 15,726 |
第10位 | 高松市 | 15,434 |
上位に京都市、奈良市が並ぶのは、いずれも古都であり寺社との結びつきが強く、参拝する機会も多いのだろうと推察することができます、トップの大津市が、京都や奈良を上回っているのは意外な気もしますが、延暦寺や園城寺、石山寺、日吉大社などを抱えて寺社に対する信仰がかなり強いのでしょうね。
祭具墓石の支出
順位 | 都市名 | 金額(円) |
第1位 | 長野市 | 22,280 |
第2位 | 鳥取市 | 11,553 |
第3位 | 東京都区部 | 11,345 |
第4位 | 新潟市 | 9,751 |
第5位 | 神戸市 | 9,663 |
第6位 | 長崎市 | 4,283 |
第7位 | 宇都宮市 | 4,252 |
第8位 | 大津市 | 3,788 |
第9位 | 高松市 | 3,259 |
第10位 | 千葉市 | 3,158 |
信仰祭祀に続いて大津市、神戸市がトップ10に入っています。いずれも県民性として信仰心が厚いのだということが分かります。東京都23区がやはりいずれもトップ10に入っているのも意外でした。23区内に限ると、古くから住んでいる人が多く、そのような人たちは寺社との結びつきが強いのかもしれません。トップが長野市で、2位と倍近い支出なのは結構謎です。思い浮かぶのは善光寺があることくらいなんですが、信仰祭祀費用でなく祭具墓石ですからね。善光寺に頻繁に参拝して、そこで線香を大量に消費しているのでしょうか。それくらいしか考えが及びませんでした。
葬儀関係の支出
順位 | 都市名 | 金額(円) |
第1位 | 甲府市 | 58,419 |
第2位 | 高松市 | 56,386 |
第3位 | 福岡市 | 42,625 |
第4位 | 徳島市 | 40,878 |
第5位 | 鳥取市 | 40,608 |
第6位 | 和歌山市 | 30,009 |
第7位 | 山形市 | 27,296 |
第8位 | 福井市 | 26,496 |
第9位 | 札幌市 | 23,853 |
第10位 | 長野市 | 23,086 |
トップは甲府市です。これも理由が分からず、いろいろと調べてみたところ、山梨県県民生活部統計調査課が発行している「やまなし統計トピックス」という記事をみつけました。それによると山梨県は現代になっても「無尽(むじん)」の慣習が残っている地域なのだそうです。単に積立をするだけではなく、無尽を通して地域内の人と人のつながりを大切にする県民性が特長ということなので、葬儀の規模も大きい(参列者が多い)可能性がありますね。高松市が2位で信仰祭祀でも10位なのは、香川県が弘法大師の生誕の地で寺院が多いことと関係がありそうです。葬儀も最近流行りの小さな葬儀が少ないのでしょう。
全体をとおしてみたときに驚くことは、支出額が多いところと少ないところの差が大きいことです。ちなみに、信仰祭祀が最も少ないのは那覇市で年間2,452円と大津市の10分の1以下、祭具祭祀の最少額は山口市の414円!で長野市の18%です。そして葬儀関係は熊本市の704円で甲府市の12%!!とても興味深く絶対に何か理由があると思うのですが、そこまでは推察できませんでした。この解明にはかなりの時間と労力を要しそうです。いつか仮説を立てることができたら披露させていただきたい、と考えています。