2019年9月に、仏壇・仏具・墓石販売等の大手、㈱メモリアルアート大野屋さんが、「仏壇に関する意識調査」を公表しています。その調査結果はかなり興味深いものでした。その調査結果も踏まえながら、仏壇について今日は考えてみましょう。
意外にも10代の意識が高い
「仏壇に関する意識調査」の概要
調査対象:全国10代以上の男女
回答数:3,812人
10代:45人、20代:310人、30代:693人、40代924人、50代:855人、60代:636人、70代:349人
調査方法:インターネット調査
調査結果サマリー
Q 自宅に仏壇があるか
ある | 以前はあった | ない | |
10代 | 38% | 9% | 53% |
20代 | 25% | 10% | 65% |
30代 | 26% | 10% | 63% |
40代 | 29% | 7% | 65% |
50代 | 39% | 7% | 53% |
60代 | 49% | 6% | 45% |
70代 | 62% | 3% | 35% |
Q 自宅に仏壇代わりの供養スペースがあるか
ある | 以前あった | ない(仏壇がある) | ない(仏壇もない) | |
10代 | 24% | 11% | 13% | 51% |
20代 | 12% | 5% | 18% | 65% |
30代 | 12% | 6% | 17% | 65% |
40代 | 15% | 5% | 19% | 61% |
50代 | 17% | 4% | 28% | 51% |
60代 | 22% | 4% | 32% | 43% |
70代 | 27% | 2% | 41% | 30% |
Q 自宅に仏壇は必要だと思うか
必要 | 仏壇の代わりになるものでいい | 必要ない | |
10代 | 29% | 24% | 47% |
20代 | 16% | 24% | 60% |
30代 | 21% | 22% | 58% |
40代 | 21% | 24% | 55% |
50代 | 31% | 23% | 46% |
60代 | 30% | 27% | 44% |
70代 | 47% | 23% | 30% |
「自宅に仏壇がある」または「仏壇の代わりとなる供養スペースがある」という回答が60代、70代が多いのは、納得できる結果だと思いますが、それに続くのが10代というのがちょっと驚きの結果です。10代は「自宅に仏壇が必要」と考えている割合も、60代、70代に次いで多くなっています。調査サンプル数が他の世代に比べると少ないため、信頼性という面では若干疑問は残りますが、少なくとも現代の10代は『亡くなった家族を供養することは大切である』という感覚を失ってはいない、ということが言えるかもしれません。これは筆者の仮説ですが、日本の高度成長を支えてきたのが、いまの60代、70代です。かれらは、まさに「仕事人間」で現役時代は仕事以外に時間を割くことはなかった。その彼らの子どもたちであるいまの20代、30代は、子ども時代に、仏壇に手を合わせて祖先を供養するという行為、慣習に触れる機会が少なかったのかもしれません。一方で10代の親世代である40代、50代は自宅に仏壇がなくても、仏壇は必要と考えている人が多いことから、高度成長期に比べると余裕が生まれたことで、祖先や家族の供養の大切さに気づいた人が増えている、ということが言えるのかもしれません。
仏壇が持つ本来の意味と役割
10代の回答からは、仏壇に未来に少しの光明を感じ取ることができます。しかし仏壇が自宅にない人、仏壇は必要ないと考える人がいずれも5割超という結果は、日本の家庭における仏壇離れを如実に表しています。そこで仏壇のこれからを考える上でも、仏壇が持つ意味と役割をおさらいしておきましょう。
仏壇は文字の通り、一般の家庭に置かれた仏教の礼拝施設です。由来は諸説ありますが、日本の庶民に普及したのは、江戸時代の寺請制度の下といわれています。仏壇には、菩提寺の宗派が祀るご本尊である仏様を模した仏像を祀るとともに、先祖や亡くなった家族の位牌を祀ります。つまり、亡くなった人を供養するための施設であると同時に、信仰する仏様に祈りを捧げる施設でもあるわけです。
無宗教下の日本に「仏」の「壇」は馴染まない
明治以降現代にいたるまで、日本人は信仰を持たない民族としての歩みを進めてきました。仏教界自身も、葬式仏教と揶揄されるように、日常の信仰ではなく、葬祭の場でしか存在感を示すことしかできない存在となっている現在において、各家庭に仏様を祀る施設は必要なのでしょうか。「ぶつだん」という名称が本来の意味を失っている時点で、その役割も失っていると考えることができます。
信仰と切り離した供養のためのスペースという考え方
信仰を持たずに、祈るべき神や仏の存在がなくても、亡くなった家族を供養することが大切であることは言うまでもありません。ここは、「ぶつだん」という「仏」の文字が入る施設から離れて、故人を供養するための施設、あるいは空間を各家庭内に持つことを考えていく必要があるように筆者は思います。古くからの日本家屋には、仏壇を配置するスペースが設けられていましたが、現代日本の住宅にはたとえ一戸建てであっても仏壇専用のスペースがない住宅がほとんどです。現代の住宅事情や、宗教観、死生観にあわせて、仏壇仏具業界でも現代風でマンションのリビングに置いても違和感のないような、おしゃれな供養施設を開発、販売しています。
最後に筆者の個人的な意見ですが。「ぶつだん」という名称も、そろそろ改めたほうが良いのではないでしょうか。