歳を重ねるにつれて、実家に帰ったときに「あぁ、両親も歳をとったな」としみじみ思ったり、友人との会話で“親の健康や介護”が話題になるなど、とくに30代以上の人は思い当たる節はありませんか? 自分も親も歳を重ねる中で、いつかは必ず訪れる、別れ。その前に、親が突然倒れて寝たきりになるなど、介護や看取りが必要になることもあります。みなさんは親の「もしも」の時に備えていますか?
親と話し合っておきたいこと・確認しておきたいこと
生前葬は別ですが、葬儀は結婚式や出産と異なり、予定日に向かって準備を進められるものではありませんよね。多くの場合、親を亡くした悲しみや動揺の中で、さまざまな事を迅速に決断していかなければなりません。また、高齢になると、寝たきりになったり認知症を発症したりする可能性もあります。今は元気でピンピンしていても、親の「もしも」はある日突然やって来ることが多いものです。
それではいったい、どのような備えをしておくのがよいのでしょうか?
親と話し合っておきたいこと・確認しておきたいことを下記にリストアップします。各家庭によって事情が異なり、両親ともに健在なのか、親と同居か別居か、自分の兄弟・姉妹の有無などにもよりますので、一般的なマニュアルとしてチェックしてみてください。
親が元気なうちに話し合っておきたいこと・確認しておきたいことリスト
1.介護について
- 子供、ヘルパーなど、誰に介護してもらいたいか
- 自宅、施設など、どこで過ごしたいか
- 介護の費用はどうする?
2.治療方針について
- もしもの時に余命宣告を受けたいか
- 痛みを伴う場合、緩和を望むか(痛み止めにより意識が混濁することがある)
- もしもの時に延命治療を望むか
3.葬儀について
- 一般葬、家族葬、自由葬など、どのようなスタイルの葬儀を望むか
- 宗教や宗派の確認
- 葬儀の費用はどうする?
4.遺産相続・形見分けについて
- 遺産相続や形見分けについて、どのように考えているか
- 遺言書はどうする?
5.お墓について
- お墓をもっていない場合、お墓はどうする?
- お墓を建てる場合、どのようなスタイルのお墓にするか
6.その他
- 通帳、年金手帳、保険証、生命保険の保険証券、土地の権利書など重要書類や印鑑の保管場所はどこか
高額な葬儀の費用をどうするべきか?
上記のリストからわかるように、親の「もしも」には多少なりともお金が必要になります。とくに葬儀は、日本人のほとんどの人が行なっている大切な儀式。葬儀の費用をどうするべきかはきちんと話し合っておいたほうがよいでしょう。
日本消費者協会の調査によると、葬儀にかかる費用の総額は約189万円となっています(平成26年 第10回「葬儀についてのアンケート調査」より)。あくまでも目安ですが、やはりお金がかかりますね。
この葬儀の費用をどのように準備するかは、おおまかに以下の2通りが挙げられると思います。
- 本人の生命保険
- 互助会
親が生命保険や互助会に加入しているかどうか、子供は意外と知らないもの。きちんと確認しておきましょう。
生命保険に加入している場合は、その内容や受取人の確認も忘れずに。親が亡くなった時に葬儀費用を立て替える必要があり、受取人が生命保険会社に申請しないと保険金を受け取ることができません。申請後すぐに保険金が受け取れるという葬儀保険もありますが、葬儀の手配は別途必要。受取人を事前に確認しておかないと、慌ただしい中でうっかり忘れてしまうおそれもあります。
その点、互助会は、電話一本で葬儀の手配や費用の相談など、専門スタッフに全てを任せられるため安心です。また、本人が加入していなくても、同居の家族が契約していれば葬儀に利用できます。親の「もしも」の時に備えて、誰の名義でどこの互助会に加入しているかを確認しておきましょう。後々のトラブルを防ぐために、契約内容もきちんと確認しておくことが大切です。
大切なのは定期的な親とのコミュニケーション
「親がもしも突然寝たきりになったら、認知症を発症したら、亡くなったら…」そんなことを考えるのは縁起でもない、不謹慎だと思われる方がいるかもしれません。しかし、親を亡くした人や、親の介護をしている人から、よくこんな声が聞かれます。
「元気なうちに◯◯について聞いておくべきだった」
「親の葬儀は、本当にああいう形でよかったんだろうか」
「そもそも親の命に関わる重要なことを、自分なんかが決めてよかったんだろうか」
親子といえども、お金の話はしにくいかもしれません。また、上記のリストにある項目を一度に確認することも難しいでしょう。“終活”の注目度が高まっていても、自分の死について考えたくないという親世代の人はまだまだ大勢います。
そんな時は、親子の会話の中でさりげなく触れるように心掛けてみましょう。ドラマや映画で葬儀のシーンを見かけたり、誰かの葬儀に参列したり、そういったことも一つのきっかけになり得ます。新聞記事や知人の体験談、亡くなった祖父母や親戚の思い出話などから発展させる手もよいでしょう。
大切なのは、親とコミュニケーションをとること。離れて暮らしていても、定期的に顔を見せたり電話をしたり、心の距離を近くに保っておくことです。また、一つ話ができれば、親にエンディングノートを勧めて活用するのもおすすめです。
世の中にはいろいろな親子がいるといっても、親の死後、子供が後悔したり心を痛めたりするのは、親の本意ではないはず。子供にとっては、親の看取りや葬儀が、最後の親孝行の機会といえます。親の「もしも」の時に備えておくことは、親のため、ひいては自分のためになると思いませんか?