故人が遺した物の中で、現預金や不動産のような財産以外の物品全般を遺品といっています。遺品を遺族間で分け合うことを形見分けといって、遺品の整理・処分の1つの方法です。しかし遺品の中には、故人が生前に使用していた身の回りの物などの財産価値の低いもの、引き取り手のないものも多く含まれています。ここでは遺品の整理と処分を考えてみましょう。
遺品整理・処分の方法
まず、遺品にはどのような物があるか整理してみましょう。
・貴重品(宝飾品や美術品など)
・コレクション(一部の人にとっては価値があるものも)
・思い出の品(写真や手紙など)
・衣類や寝具
・家具や生活雑貨
・食料品
貴重品や一部のコレクションなどで財産価値があるものは、相続税や贈与税の対象となることもありますから注意が必要です。しかし価値がある物は、希望する人もいるでしょうから、誰に渡すか迷うことはあっても、どう処分すればいいかで悩むことはなさそうです。
写真や手紙など故人の思い出の品は、遺族にとっても残しておきたい物でしょう。でも膨大な量だったらその全てを残すことは難しいかもしれません。と言っても廃棄するのは躊躇われます。そんなときのために「お焚き上げ」という儀式があります。元来は神社で古い神札やお守りを焼いて吉凶を占う神事でした。現代でも万物に霊が宿るという神道の教えに沿って、使わなくなった物などを焚いて供養するという儀式になっています。故人の物だけでなく、仕事で使い続けた道具や人形など捨てることを躊躇する物の供養としても知られています。お焚き上げを依頼できるのは神社仏閣だけでしたが、最近では遺品整理やお焚き上げを専門に行う事業者でも依頼を受け付けています。それらの事業者は、神主や僧侶を呼んでお祈りをあげて供養しながら焚き上げてくれます。
衣類や寝具、家具や生活雑貨も思い出の品同様にお焚き上げで処分することはできますが、これらは再利用が可能です。福祉施設への寄付やボランティアを通して海外の困っている子どもたちへの寄付など、遺された物を有効に活用する方法を検討してみましょう。
遺品は故人の縁ある品。少なくとも廃棄という方法をとるのは最後の手段にしたいものです。自分たちだけで全ての遺品を整理するのはかなり消耗します。お焚き上げのところで説明した遺品整理を請け負う事業者が増えています。遺品整理専門会社、便利屋、特殊清掃業務会社など名称はさまざまですが、困ったときには相談してみるといいかもしれません。
デジタル遺品
高齢者でもインターネットを利用する人増えている、まさに現代はデジタル社会です。誰しも複数のデジタルデバイスを所有し活用しています。故人が遺したデバイスがデジタル遺品です。お分かりでしょうが器に意味はありません。中のデータが重要なのです。筆者は、デジタル遺品は大きく3つに分かれると考えています。
① 遺族にとっても重要なデータ。
ネットバンキングやネット証券の口座など、財産に直結する情報(財産に関連するメールなども含まれます)
② 思い出のデータ
画像やメール(写真や手紙に相当する)などのデータ。SNSなどのアカウント
③ 遺族に見られたくないデータ
デジタル遺品は遺された遺族にとって厄介の種ともなります。それは、どこに何が遺されているのか分からないからです。家族に内緒で資産運用をしている人もいるでしょう。遺族にはその資産を相続する権利があるので情報を知りたいでしょう。画像やメールも写真や手紙同様に、遺族が見て故人を偲びたいと考えても不思議ではありません。しかし、デジタル遺品には③がありえるのです。家族はおろか誰にも知られたくないデータを保管している人も少なからずいることでしょう。遺族にしても「知りたくなかった」というケースも多分にあると思います。
デジタル遺品は故人がパスワードを管理しています。家族間でもパスワードを共有していることは少ないと考えられますので、万が一のときに専門的にサルベージを行っている事業者に依頼すればデータを取り出すことは可能です。しかしそのときには③のリスクも漏れなく付いてきてしまいます。
生前整理の勧め
先に書いたとおり、遺品の整理は遺族が消耗します。どのように処分すれば良いか生前にまとめておけば、それだけで負担は大幅に減ります。そして最も遺族を悩ますダジタル遺品は、生前にどこに何のデータがあるのか、そしてその処分方法を明確に書き記しておくことで遺族の悩みは解決されます。デジタル遺品の種類や数は変化が激しいと思いますので遺言状には馴染みません。エンデイングノートにまとめて整理しておく、あるいはデジタル遺品だけの整理でも良いので、何らかの形で記録にすることを考えてみてください。
最後になりますが人に見られて困る物は、デジタル遺品であれ、何であれ遺さないように気をつけたほうがいいかもしれないですね。
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