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葬儀の生前契約を交わすときに、気をつけたいこと。契約書は家族と一緒に読みましょう

記事公開日:2020.03.06/最終更新日:2023.04.07

読了予測:約4分

少し前に「死後事務委任契約」についての記事を掲載しました。これは主に一人暮らしの高齢者が亡くなった後に発生する、死後の事務一式を委ねるという契約で、その中には葬儀関連に関するものも含まれています。生前に契約を交わすということでは、死後事務委任契約と同一ですが、死後の事務を託すことができる相続人、遺族はいるけれど、葬儀だけを事前に契約をするというケースが近年増えてきているようです。これは葬儀の「生前契約」と言われています。

アメリカ発祥で日本では199年代から

葬儀の生前契約(予約)という考え方は、契約社会であるアメリカで発祥したものです。日本では1990年代以降に普及をはじめ、今では多くの葬儀社のサイトで目に留まる、一般的にも耳に馴染んだ言葉になりつつあります。しかし、新しく生まれたサービスであるために、死後事務委任契約同様に、規制する法律も監督官庁も存在しないことを、まずご認識ください。

生前契約のメリット

はじめに、生前に葬儀社と、自分の葬儀の契約をすることのメリットをまず考えてみましょう。

① どのような葬儀にするか、じっくりと検討することができる。

  • 多くの場合は亡くなった後の限られた時間の中で、葬儀社を決めてプランを選ぶので、検討している余裕はほとんどありません。

② 自分が希望する葬儀にすることができる

③ 予算を事前に把握できる(総額を抑えることや、部分的に費用をかけたいところなども検討が可能)

④ 複数の葬儀社から提案してもらうことができる

  • ①から③を可能にするために、複数の葬儀社のプランを検討することも可能です。

⑤ 遺族の負担を軽くすることができる

ざっと考えたところで、これだけのメリットをあげることができました。しかし、メリットばかりではありません。

生前契約のデメリット

では、生前契約において考えられるデメリットは何でしょうか。

① 遺族の理解を得られていない場合に、遺族と葬儀社の間でトラブルが発生する可能性がある

② 契約が履行されるのは、不確定な将来なので、契約時と自分自身の希望だけでなく、社会環境や、物価上昇などの変化により、自分の希望した葬儀とならない可能性がある

デメリットの数は少ないですが、かなり大きなリスクが存在することが分かりますね。

生前契約を交わす際に気をつけるべきこと

生前契約には、独自の規制法が存在しないために、民法が規定する委任契約の一貫として存在することになります。そのために契約書の内容が実に重要です。

① 死後の契約存続条項が盛り込まれているか

  • 委任契約は民法第653条で、委任者または受任者の死亡をもって、委任が終了すると規定しています。ただし、最高裁は、委任者が死亡しても委任契約は終了しないという合意を交わすことで契約は有効である、と判断しています。そこで、契約書にその旨が盛り込まれていれば、契約者死亡後も有効となります。逆にその条項がないと、相続人が無効を訴えた時に、受任者である葬儀社は抗弁できなくなるため、委任者である故人の意思がたとえ契約どおりだとしても、履行できなくなってしまいます。

② 契約内容の見直しができるか

  • デメリットの②をクリアするためには必須と言えるでしょう。結果的に契約者である自分(故人)が希望する葬儀にならないのであれば、生前契約の意味が半減してしまいます。

③ 解約金条項に注意

  • 最近消費生活センターには、生前契約の解約で高額な解約金を請求されたという相談が増えているようです。契約金の50%を解約金としている葬儀社もあるようですので、注意が必要です。

④ 契約は、契約を交わすことだけでなく、その内容についても家族や親族(遺族)の理解を得ること

  • 実際に葬儀を執り行うのは遺族です。ですので、生前契約を交わしていることを、家族が知って、理解していることが大前提です。さらに、契約者である自分は既に亡くなっているのですから、契約通りに葬儀が行われたのか確認することはできません。受任者である葬儀社が契約を順守し、かつ民法第644条か規定する「善管注意義務」をもって委任された葬儀にあたっているかを、遺族が監督する必要があるのです

 

これから、ますます葬儀の生前契約が増えていくだろうと予想できます。もしもトラブルが多発するようであれば、なんらかの規制が生まれるかもしれません。しかし現状では、契約書が最大にして唯一の拠り所なので、アメリカのような契約社会とは言えない日本でも、契約書の一言一句に気をつけていただきたいと考えています。