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【家族葬】について考えてみましょう

記事公開日:2017.05.19/最終更新日:2023.05.11

読了予測:約5分

最近テレビCMや電車の中吊り広告などでも、時折目にするようになった「家族葬」。多くの葬儀会社も力を入れているみたいで、露出が増えている言葉ですね。でも家族葬というお葬式のスタイルが明確に定義されたものでないことをご存知でしょうか。最近では家族葬によるトラブルも多くなっているようです。そこで家族葬とは何か、何に気をつけなければいけないのか、考えてみましょう。

家族葬と密葬

お葬式は、お通夜、お葬式、告別式、火葬という一連の流れ(地域により順番は異なります)を、集中した短期間で行います。この一般的な形態を一般葬といいその名の通り社会で一般的に認知されているお葬式の形態で、故人が亡くなったことおよびそのお葬式を行うことを広く告知をし、多くの故人と縁のある人が会葬するお葬式です。

一方で何らかの理由で故人が亡くなった後すぐに、広く告知をするお葬式ができない場合があります。そこでごく親しい者だけで小規模なお葬式を行い、多くの会葬者が参列するお葬式を後日行うという形態があります。この小規模なお葬式のことを密葬といい、密葬の後に行うお葬式を本葬といいます。

家族葬は小規模なお葬式のことだといわれます。そうすると密葬と似ていますね。では密葬が家族葬なんでしょうか?さまざまな葬儀社のお葬式プランを見比べて、故人の家族やごく親しい少人数で行う小規模なお葬式(ここまでは密葬と同じです)だけ行い、広く告知をする本葬は行わないのが家族葬だ、ということがわかりました。

会葬する人に特段の決まりはありません。小規模なお葬式だけ、ということであればすべて家族葬といえます。ところで、葬儀社の中には、家族葬の内容を密葬と称して案内しているところもありますが、密葬と家族葬は厳密には違うものであることは理解しておきましょう。

家族葬に注目が集まる理由

家族葬は都市部でとくに増えているようです。その理由を考えてみるといくつか思い当たることがあります。1つには、都市には地方から出てきた人も多く、そのような人にとってみると遠隔地にいる親族や知人をお葬式に招きづらいという理由があげられます。また、地方と異なり隣近所との付き合いは挨拶程度といったように、お葬式に招くほど深い関係にはなっていないのも理由の1つでしょう。しかし、おそらくですが大きな理由は、多くの人に会葬してもらう一般葬が虚礼ではないか、と考える人が増えてきているのかもしれません。そしてもう1つが、お葬式にかかる費用ではないかと筆者は考えています。

一般葬はあまりにも儀式的、形式的に感じられるので、本当に弔いたい家族だけで見送りたいと考える人が増えているのでしょう。また費用に関しては、明確な情報を持っていなくても漠然と「お葬式には大金がかかる」と思って、できるだけ費用を安くしたいと考える人が増えているのでしょう。

では家族葬の費用はどれだけ安いの?

インターネットで調べると、一般葬より家族葬が安価であることを前面に出した家族葬プランを提案している葬儀社を多く見ることができます。確かに会葬者が少数かつ限定されることで費用総額は少なくなります。この点で決して偽りでも誇大な広告ではありません。ただし、一般葬との違いは会葬者の人数1点といっても差し支えなく、そう考えると何が安くなっているのか理解することができます。支出する費用に関連する違いを一覧にしてみましょう。なお、お通夜、お葬式、告別式、火葬という一連の流れすべてを網羅した場合です。すべてを行わない場合は当然ですが安価になります。

  一般葬 家族葬
会葬者 多数(不特定) ごく少数(限定)
葬儀場 広い会場、多くのスタッフが必要、貸し切りに近い 小さな会場、少人数のスタッフ、貸し切りでなくてもOK
通夜振る舞いやお斎(精進上げ) 多くの人数分の用意が必要 なし
お香典への返礼品 多くの人数分用意 なし
祭壇、お棺など 人数に関係なく必要 人数に関係なく必要

 

ここで1つ注意しなくてはいけないことがあります。それはお香典です。お香典は遺族にとり収入となります。お葬式の費用は収支予算を組んであらかじめ見込んでおくという性質のものではなく、あくまでも結果でしかありませんが、お香典でお葬式の費用を相殺するというケースがあるのも事実です。つまり家族葬の場合は、お香典が少ないか、あるいは全くないということも想定できるため、一般葬よりも負担が増える可能性があることは理解しておきましょう。

家族葬のメリット

費用に関しては、一般葬より確実に安価とはいい難いのはおわかりいただけたと思います。では、それ以外のメリットはなんでしょうか。それは大きく次の2点だと考えています。

  1. 真に故人を見送りたい者は家族だけ、と考えている場合には、その想いどおりのお葬式にすることができる
  2. 一般葬では遺族は会葬者への対応をする必要がある。家族葬ではそれがないため、故人とゆっくりとお別れができる

家族葬で考えられるトラブル

最後に、家族葬にすることで起こるトラブルを考えてみます。大きくは次の2点です。

お葬式に参列できなかった故人に縁のある人に対して不義理が生じるおそれがある

家族は故人がこれまで縁のあった人すべてを把握しているとは限りません。一般葬であれば、新聞などによる告知や、知人間の口伝などによって、家族が把握していない人であっても故人を弔うために会葬することができますが、家族葬ではそれは不可能です。また、親族にも声をかけない家族葬(例えば2親等くらいまでに限定した場合)にすると、親族から不興をかい、その後の付き合いに大きく影響することがあります。

故人と縁のあった人は家族葬の後、自宅を弔問することとなるため、家族は多くの弔問客の対応に追われる可能性がある

故人と縁ある人は、何らかの形で弔いをしたいと考えるのが普通でしょう。自宅に弔問するか、お墓参りするにしてもお墓がわからないときには家族の元を訪れるか電話等で問い合わせるしかありません。家族葬にしたからといって、そのような申し出を拒否すべきではありません。お葬式後の負担が増える、その覚悟はしておくべきでしょう。

さまざまな理由から家族葬を選ぶ人が増えているのでしょうが、選ぶ前に1つだけ考えてほしいと思います。故人を弔いたい、見送りたいのは家族だけなのでしょうか。生前の故人にお世話になった人、恩がある人はいないのでしょうか。また故人に目をかけてもらい、子どものように、兄弟にように愛してくれた人はいなかったのでしょうか。故人を大切に思う気持ちが、一番が家族であることは間違いないですが、故人には家族以外にも別れを告げたい人がいたかもしれません。

最近はエンディングノートや遺言状でお葬式は家族葬で(ごく身内だけで)と希望を遺し、家族はそれを実現するというケースも多いようですが、そうではない場合家族は故人をとりまく多くのことにも目を向けてほしいと筆者は思います。