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死後の公助であり共助でもある「 助葬 」

記事公開日:2021.02.11/最終更新日:2023.04.06

亡くなった人が、身寄りがなく生活困難者だった場合、また身元が不明だった場合、その埋火葬は「墓地、埋葬等に関する法律第9条」に基づき市区町村が行います。実際には市区町村が市区町村ごとに定めた定額の費用を、埋火葬を行う団体に支払い、その団体が火葬から納骨までを行います。この市町村の委託を受けた行為を「助葬」といいます。

助葬が行われるケース

故人の身元が不明

「孤独死」という言葉があります。これは、亡くなっていた場所が、家屋内外を問わずにたった一人で亡くなっていたことを指します。一人暮らしの高齢者の孤独死が超高齢化社会を迎えた現代日本の社会問題の1つとなっていますが、最近では年齢に関係なく周囲との関係を一切絶ち居室で亡くなっていたという孤独死も見受けられます。それ以外にも昔から存在する身元が不明の遺体が発見された場合も孤独死となります。このような孤独死が見つかった場合は、市町村が身寄りを探します。遺体の引き取り手、葬儀の担い手が見つかれば問題ないのですが、見つからなかった場合は「行旅死亡人」と認定されて、埋火葬を市区町村が助葬を行う団体に委託します。

故人が生活保護を受けていた、生計困難者など

最近では故人の身元が分かり身寄りがいる場合でも、生活保護を受けており葬儀費用が捻出できない場合には、生活保護行政の一環として支給される葬祭扶助費によって埋火葬を行うことも助葬の範囲に含まれているようです。この場合は遺族が市町村に申請を行うことが必要となります。

助葬を行う団体と費用

助葬にかかる費用は市区町村により異なりますが、決して多くはないので、助葬を事業として行っているのは主に社会福祉法人、NPO法人の非営利団体です。稀に助葬を行っている団体に頼めば葬儀費用が無料で済むのですか、という質問をされる人がいるようですが、助葬は無料ではありません。身元が不明な場合、生活困難者の場合、いずれも市区町村の支出ではありますが有償です。税収からの支出ですから、条件に合致しない限り助成は出ません。ただし、葬祭扶助の条件に適合しなくても、社会福祉法人やNPO法人では相談を受け付けていると思います。

 

共助の形の1つでもあり、その歴史は古く1919年には「財団法人助葬会」という団体も設立されていました。しかし、助葬費用の増加は市区町村の財政を圧迫する要因の1つとなっています。神奈川県横須賀市を始めとした、一人暮らし高齢者が安心して最期を迎えることができるためサポートする行政サービスも、一人ひとりに終活を意識してもらうことで、助葬を行わねばならないケースを少しでも減らすことも目的の1つだと思いますが、全てをカバーするのは至難の技でしょう。第二次大戦後にイギリス労働党が掲げた「ゆりかごから墓場まで」は日本も社会福祉政策の指針としていますが、墓場までのカバーは遠い道のりに思えます。これから迎える多死社会はより大きな公助が必要な社会だと思いますが、現実に目を向けた場合には、ここでも自助が求められる社会になりそうです。自分の死後のことも、しっかり準備しておく、つまり終活が一層求められるのですね。