故人の遺品を遺族の間や親族や友人などで分ける形見分け。意外と知られていませんが日本固有の風習なんです。故人を偲ぶ行為ですが、実は気をつけなければいけないことが結構あるんです。
形見分けの時期
「形見」の語源は文字通り「形を見る」です。つまり故人や別れた人を思い出すような品のことを指して「かたみ」と称した、日本古来よりの土着の風習として定着したもので宗教的な制度に基づくものではありません。そのため形見分けをする時期が明確に決まっているわけではないのです。仏教の場合は、四十九日後に、神式では50日祭あるいは30日祭の後に、キリスト教式の場合は亡くなった後しばらく経った後のミサで、などという説明を多く見受けられますが、宗教的な行為ではないので、決まりではありません。1つの目安くらいに考えておけば良いでしょう。
気をつけること
形見分けをする際には、次のようにいくつか気をつけなければならないことがあります。
- 遠慮されたら、押し付けることは避けましょう。
- 衣類はクリーニングに出してから渡しましょう。
- 故人にとっては大事な品でも傷んでいるもの、安価すぎるものは控えましょう。
- 故人より目上の人には形見分けはしないのが基本です。
- 箱に入れたり包装したりはしないのが基本です。
高額な品にはさらに注意を
財産というと、現預金などの金融資産や不動産などだけを思い描きがちですが、形見分けする遺品が高額な品物だった場合には、贈与税の対象となる可能性があります。例えば次のような品には特に注意が必要です。
- 書画骨董など美術品
- 身の回りの物でも宝飾品の類
- 着物
- 趣味のコレクション(特定のマーケットでは価値があるものがあります)
- 花卉(欄や盆栽には高額な物もあります)
遺産とみなされる場合もあります
逆に高額でなかった場合にも1つ注意が必要です。形見分けをする品が、故人が遺した物全体の中で、どれくらいの割合を占めているかによって、財産(遺産)かそうでないかの判断がされます。つまり金融資産や不動産などの財産が何もなく、遺された物が身の回りの物だけだった場合には遺品が遺産と認定されてしまうのです。判例にも、債権(借金)を抱えて亡くなった被相続人(故人)の母親(相続人)が、故人の衣類や家具などの遺品を持ち帰ったことを、相続財産の隠匿(民法第921条第3号)にあたるとしたケースがありますので、注意が必要ですね。
トラブルを避けるには
「誰が何をもらうか」で揉めるケースが多く見られます。故人から生前にもらう約束をしていたから、といって勝手に持ち出してしまい、兄弟や親族間で深刻なトラブルになったという話も聞きます。故人を偲ぶはずの形見がトラブルの種になってしまっては悲しいですよね。そんなトラブルを避けるためより良い形見分けの方法を考えてみましょう。
- 金銭的な価値が不明なものは鑑定して価値を明確にする
- 高額な品は、形見ではなく財産として相続の対象とする
- 形見分けは残った高額でない品のみとし、遺族全員が合意のもので分ける相手を決める
こんなところではないでしょうか。エンディングノートなどに、遺品をどのように処分するか、はっきりと記されていれば遺族は安心ですね。