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形見分けと相続

記事公開日:2017.06.30/最終更新日:2023.05.15

読了予測:約3分

遺産相続の遺産とは何か、と問われると「現金や預金、有価証券などの金融資産と不動産」を思い描く人が一般的だと思います。そして遺産とは別に故人の思い出の品などを遺品として、遺産相続(分割)とは別に形見分けと称して親しい人の間で分ける慣習があります。しかし、遺品の価値や故人の財産状況によっては遺品が遺産と解釈される可能性もあるのです。

相続税の対象となる遺産に認定される可能性

法定相続人が形見分けとして譲り受けた品が高額であった場合には、相続税の対象となります。相続税の税率は次のとおりですが、形見分けとして受け取った品の評価額がそれなり(厳密に運用するとしたら、市場価値がつく品はすべて鑑定した正規の評価額で計算しないといけません)の額の場合には、相続した額に形見分けで受け取った品の額を加算して相続税額を算出しないといけませんし、そもそも遺産分割をするベースに加算して分割しないといけません。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億年超 55% 7,200万円

遺された遺品の価値が分からない品は、安易に形見分けとするのではなく、鑑定によってその価値を明確にした上で、遺産分割(相続)の対象とするのが正しい方法です。また、相続税を免れようとして、現預金や有価証券、不動産をモノに代えて相続ではなく形見分けとして譲渡したとしても、国税はしっかり見ていますからご留意を。「故人はそんなつもりはなかったし、自分も知らなかった」と主張しても、延滞税と重加算税がかかってきます。

価値がない遺品も遺産とみなされる

法的には、多くの財産の中にある資産価値がない(少ない)とみなされる一部分の品は、形見分けという慣習に則った遺産分割とは別の遺品の譲渡行為として認められています。しかし、遺された品が衣類や家具、雑貨など身の回りのモノしかない場合には、それらが遺産(財産)と認定されてしまうのです。2つの判例があります。1つは多額の遺産を遺した故人の相続人が、故人の衣類や家具のほとんどを持ち帰った行為を裁判所は遺産処分とは認定しませんでした。つまり形見分けであると認めたのです。一方で、何の資産もない故人の相続人が、故人の衣類、家具を持ち帰った行為は相続財産の隠匿(民法第921条第3号)であると裁判所は認定しました。形見分けの限度を超えていて、遺産分割(相続)に該当するという判断です。同じような品であっても、故人の経済状況により判断が異なるというのは、納得し難い部分もあるかもしれませんが、これが法に基づいた決まりなのです。相続は相続人が放棄することができます。故人が借金などを抱えていた場合に、その借金の相続を放棄するときなどに選択しますが、2番目の判例のように遺品を持ち帰ったことが遺産相続にあたるとみなされてしまうと、借金の相続を放棄することができなくなります。残念ながら「知らなかったから、遺品は返します」では済まないんです。判例2番目の故人は実際に多額の借金を抱えていました。相続人はこの行為により遺産相続を承認したとみなされ、(借金)相続の放棄ができなくなってしまったのです。

 

形見分けも、法的な側面から見ると、奥が深い、注意しなければいけない行為だということがお分かりいただけたでしょうか。しっかりと覚えておいてくださいね。