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葬儀にサプライズ・感動演出は馴染むのか

記事公開日:2018.07.18/最終更新日:2023.04.04

葬儀のかたちが多様化する現在では、直葬や家族葬と称する小さな葬儀のように、葬儀の規模だけではなく、葬儀会場や葬儀の演出を凝らすというスタイルまで出始めています。インターネット上では否定的な意見の人が多い葬儀の演出について、自分なりに考えてみました。

あった!「驚きの演出」

まず、どんな演出があるのか調べてみました。「お祭り好きだった故人のため、和太鼓の演奏が入る」「故人が好きだった『太陽にほえろ』のテーマが葬儀式場に流れる」「故人が好きだった『見上げてごらん夜の星を』を式の途中に参列者全員で歌う(歌うよう促されたようです)」「故人が好きだった天ぷらをお棺の前で遺族が揚げる」といった結構驚きの事例が見つかりました。「お棺の周りをバルーンアートで飾る」「式場を、登山好きの故人が撮影した山の写真で飾る」この辺りは大人しめで、なんとなくですが理解できそうな気もします。

ブライダル業界出身の社長が仕掛け人

初めは東京都のとある葬儀社が始めたようです。『ガイアの夜明け』でも取り上げられているその会社の演出はサプライズを旨とし、依頼主である喪家に断ることなく仕掛けているようです(その演出に要した費用は請求しないとか)。創業者の社長はブライダル業界の出身だそうで、多くのメディアから取材も受けていろんな話をしていますが、筆者は「要するに異業種のノウハウを持ち込んで差別化したかった」のだと受け取っています。少子高齢化社会は、ブライダル産業の危機とフューネラル産業の隆盛をもたらします。しかし新規参入者が既存の事業者と同じことをしていては太刀打ちできませんので、この社長のチャレンジはビジネス的には間違ってはいません。なお、この会社の現在のコポーレートサイトには「サプライズ葬儀」「感動葬儀」という言葉は前面に出ていません。「喪家の希望に沿う、心のこもった葬儀を、アフターサポートまで含めて、1円単位の明朗会計で、全て自社社員が行う」ことを打ち出していて、お客様である喪家(遺族)を第一に考えるという企業姿勢を感じ取ることができます。この会社が現在でもサプライズ演出・感動演出をしているのかは分かりかねますが、インターネットで「感動葬儀」で検索すると、別の複数の葬儀社が見つかります。これらの会社のサイトでは、「葬儀には感動が必要」を前面に押し出しています。

日本には馴染まない

葬儀に感動的な演出が必要と説いている人の多くは、「日本の葬儀は地味で暗すぎる。海外の中国やインドネシアの葬儀は爆竹を焚いたり、鐘を鳴らしたり、遺体を神輿のように担いだりする。だから日本でも派手な葬儀があってもいい」と言いますが、それは正鵠を射ているのでしょうか。国により文化や慣習はまちまちです。異国の文化・慣習に敬意を払うのは当然としても、文化・慣習が異なる国のやり方・考え方を是として持ち込むことには賛成できません。葬儀は日本の文化でもあります。時代とともに変わっていくところはあるでしょうが、本質的なことは曲げてはならないと筆者は思います。ではその本質とは何か。日本人の多くが共通理解として抱いている葬儀は「しめやかに、密やかに、厳かに故人を見送る場」ではないでしょうか。このことが損なわれていたら、多くの参列者が不快に感じることでしょう。「遺族がよろこんでくれればいい」と言う人がいそうですね。では葬儀は誰のためにするものなか、もう一度考えてみましょう。葬儀は遺族が故人を見送る場であり、遺族が故人と生前縁あった人に感謝を伝える場であり、故人と生前縁あった人が故人に別れを告げる場です。つまり、参列者(全ての参列者ではなく、故人と縁の深さによります)も葬儀においては重要な主体の1つなのだと筆者は考えています。そこでビジネスという面から捉えても、葬儀社にとっても重要なステークホルダーである参列者を尊重しない演出を筆者は勧めることはできません。故人の好きだった花を飾る、故人の好きだった曲(あまり騒々しくない)を流す、故人の撮影した写真で式場を飾る、このくらいのレベルでとどめておくのが良いと思います。「過ぎたるは及ばざるが如し」ですね!