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【MOVIEガイド】洗骨

記事公開日:2020.01.27/最終更新日:2020.03.16

お笑い芸人ガレッジセールのゴリさんが、本名である照屋年之名でメガホンをとった2018年公開の作品です。ゴリは日大藝術学部映画学科中退で、お笑いネタだけでなく役者としても映画やドラマでも活躍中。監督としては、2009年公開の『南の島のフリムン』で初の監督・脚本を担当し、2016年には短編映画「born、bone、墓音。」でショートショート フィルムフェスティバル&アジア 2017 ジャパン部門賞グランプリ、SKIP シティ国際 D シネマ映画祭 2017観客賞、札幌国際短編映画祭 2017 では 特別賞の「観光庁長官賞」と「市民審査員賞」のを受賞するなど高い評価を受けました。この、「born、bone、墓音。」が洗骨をテーマにした作品で、この短編を下敷きにして新たな長編映画に創り上げたのが本作品です。Blu-rayやDVD、ペイTV等でも鑑賞することができます。

スタッフ

監督:照屋年之

脚本:照屋年之

製作総指揮:白岩久弥

キャスト

新城信綱:奥田瑛二

新城剛:筒井道隆

新城優子:水崎綾女

神山亮司:鈴木Q太郎

新城美恵子:筒井真理子

ストーリー

愛する家族を失った新城家。妻恵美子(筒井真理子)を亡くした信綱(奥田瑛二)、母を亡くした剛(筒井道隆)と優子(水崎綾女)は、悲しみを胸に恵美子を見送る。しかし新城家のある粟国島には4年後に故人と再会する「洗骨」という慣習が残っている地域だった。剛と優子はそれぞれ4年後に母と再会するまでの間、本土の仕事に戻っていく。

そして4年ぶりに剛と優子が戻ると、最愛の妻を亡くした信綱は酒浸りの日々を送っていた。信綱はまだ恵美子が死んだことを受け入れることができずにいるのだ。剛も優子も本土での生活でさまざまな苦労や葛藤を抱えて生きてきていた。剛は腑抜けになっていた信綱に怒りをぶつける。恵美子という家族の核を失った4年間で、ばらばらになってしまった新城家。家族が1つにならなくてはいけない「洗骨」までに家族の絆をとりもどさなければ。

 

少し前に記事(50年くらいまで沖縄の一部に残っていた風葬を調べてみました)にした、沖縄の離島に残る「風葬と洗骨」という慣習を題材に、家族との別れである弔いをきっかけに失われつつあった家族の絆が蘇っていく、家族再生の物語です。

葬儀や、法事を通して家族が再生していくという設定は、このテーマの王道ともいえるものですが、この映画はそれだけでなく、沖縄の離島で近世まで残っていた(現在もまだ一部で行われているともいわれています)風葬と洗骨という儀式(文化)の、意義や方法などを詳細に伝えることができている実に貴重な作品です。併せて舞台である粟国島の慣習や人々の暮らし、島の素晴らしい風景(自然だけでなく、島の中のすべてが魅力的)を心ゆくまで堪能することもできます。

監督がゴリさんだけあって、随所にユーモアが溢れていて、重いテーマの作品なのに決して観ている者の気持ちが沈むことはありません。個人的は、重いテーマであればあるほど、最後まで観続けることができるためにはユーモアの要素が必要だと考えています。

父親である信綱を演じた奥田瑛二の壊れっぷりが圧巻ですが、これは演りすぎではなく最愛の妻を失った男は誰しもこのように壊れるかもしれない、と思ってしまいました。やはり妻よりは先に逝きたい、観終わった直後の感想です。