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エンバーミングとは何か(新しい葬送技術を知ろう)

記事公開日:2021.03.30/最終更新日:2023.04.03

読了予測:約5分
経営破綻の可能性もありうる

日本でも耳にする機会が増えた言葉であるエンバーミングが本日のテーマです。遺体衛生保全と訳され、遺体に科学的な施術をすることで、腐敗などから遺体を護ると同時に、遺体の損傷やダメージを修復し生前と変わらない故人の姿にするというものです。この日本では新しい葬送の技術を何回かに分けて少し掘り下げてみることにしましょう。

これまで日本では馴染まなかった

エンバーミングが最も普及しているのは北米大陸です。アメリカやカナダは土葬文化でもあることから、亡くなった人の90%以上にエンバーミングが施されているそうです。ヨーロッパは国により大きな違いがあって北欧は70%以上だそうですが、10%以下の国も存在しています。99%が火葬に付される火葬大国である日本ではこれまでほとんどニーズがありませんでした。現在の普及率は1%台だといわれています。エンバーミングは遺体を保全することが目的なので、亡くなった後1週間程度の間に火葬し埋葬する葬送文化の中で必要性はほとんどなかったのが実情でした。そしてそれ以外にも次のような日本人の死生観もエンバーミングに馴染まないものでした。

【日本人の死生観】

○ 死を自然なものとして受け止める(生きているかのような姿は不自然である)

○ 遺体に何らかの手が加えられることを嫌う(刑法でも死体損壊を禁じている)

○ キリスト教の教義では死後の復活を謳っているが、仏教の教義(浄土真宗は異なる)は死後に極楽浄土に導かれるため復活する時に備えるという考え方は存在しない

「ごじょクル」のエンバーミング

日本で増え始めた理由

日本でも外国人旅行者が亡くなった時には故国に送り届けるためにエンバーミングを施すことがあったようですが、日本国内で行う葬儀の前にエンバーミングを施したのは1988年に埼玉県で行われたのが最初です。普及率は1%台ですが30年前はゼロだったこと、そして前で記した火葬文化と日本人の死生観を考えると、驚く伸び率であるとも言えそうです。増えている理由は次のようなものだと考えられています。

① 遺体の腐敗を防ぐ、遺体からの感染症を防ぐ

延命治療や高度治療を施した遺体は腐敗しやすくなっています。現代医療の中で以前よりも腐敗を防ぐために何らかの手段を講じる必要性が高くなっているのです。また都市部では火葬場が不足しているため火葬に付すまでに長期間待機を余儀なくされることが増えているため、その間の腐敗を防ぐ必要があります。もう1つが感染症対策です。人が死んでも遺体内の細菌やウィルスが死滅するとは限りません。むしろ死んだことで免疫機能が失われた遺体内はさまざまな感染症の温床となる危険性が高いのです。もちろん腐敗が進んだ遺体はその危険性をより高めることになります。

② 葬送の多様化に伴い、故人をゆっくりと美しく見送りたいというニーズが増えている

家族葬などの小さな葬儀は、昔ながらの葬送形式にとらわれない自由な葬儀スタイルの増加という傾向を生み出しました。最終的に火葬に付すとしても、それまでの間は生前と変わらない姿の故人と時間をかけてお別れをしたいという声が少しずつ、しかし着実に増えているようです。

③ 外国人の増加に伴い故国の遺族(家族)のことを考える必要がある

旅行者だけでなく、現代の日本には多くの外国人が暮らしています。彼らが亡くなった時に、遺体を故国に送るにはエンバーミングを施す必要があります。また、日本国内で葬儀を営み埋葬するとしても、故国から家族が来日し遺体と対面するまでにはそれなりの期間が必要となります。遺体を腐敗から保全するという意味合いだけではなく、亡くなった外国人の死生観に合わせること、故国から葬送に訪れる遺族(家族)のために、生前のような美しい姿の遺体にすることは人としての努めでもあると思います。

「ごじょクル」のエンバーミング

エンバーミングの技術

エンバーミングの基本となるのは腐敗対策です。血管にホルマリンなどの細胞や酵素などが不活性化し遺体を固定化する液体を注入することで、腐敗や感染症の元となる血液を遺体から取り除くのです。エンバーミングで施される詳しいことは別の記事で調べてみたいと思いますので、ここでは簡単にプロセスの1つを記しておきます。

① 遺体の全身殺菌消毒

② 洗浄とマッサージ

③ 切開し血管を確保

④ ホルマリンなどの液体を遺体内に注入

⑤ 胸腔・腹腔に薬剤充填

⑥ 切開カ所を縫合

⑦ 洗浄

⑧ 衣装を着せる

⑨ 化粧を施し、髪を整える

エンバーミングの技術

「ごじょクル」のエンバーミング

エンバーミングを施せるのはエンバーマーだけ

日本にはエンバーミングを直接規制する法律は存在しません。しかし刑法第190条では死体を損壊することを死体損壊罪として定めています。遺体の血を抜いたり、ホルマリンなどを注入するエンバーミングは死体損壊にあたらないのでしょうか。刑法の法解釈としては、このような施術は遺体損壊に該当するという結論が出ています。しかし、その行為に違法性があるかどうかを検討するために1991年に厚生省(当時)が立ち上げた研究会はその報告書で、遺族了解のもとで死者に対する礼節を欠かないものであるなら違法性は認められないと述べています。この報告書が世に出た後、1994年に日本におけるエンバーミングを自主規制するための団体である一般社団法人日本遺体衛生保全協会(IFSA)が設立され厳格な基準を設けました。そして専門資格を有するエンバーマーのみが行うことが許されています(正確には、国がIFSAが定めた基準に則ったエンバーミングは違法ではないとしているのです。それ以外のエンバーミングは死体損壊罪に問われる危険性があります)。

「ごじょクル」のエンバーミング

エンバーミングの費用

エンバーミングの費用はIFSAが定めており、基本費用は15万円から25万円となっています。基本費用以外にかかる費用や、海外への搬送費などは別の記事で調べてみたいと思います。

エンバーミングにかかる費用

エンバーミングのメリットとデミリット

上で記したエンバーミングが増えている理由はメリットの1つですね。デメリットとしてまず思いつくのが、費用負担の増加になります。メリットとデメリットも整理して別の記事でご案内したいと思います。

エンバーミングのメリットとデメリット

エンバーミング四方山話

日本ではまだまだ歴史が浅いエンバーミングですので、海外の事例も含めてその歴史などのまつわる話を色々探してみたいと思っています。それらは改めて記事にしますので、お待ち下さい。

エンバーミングを施さないことで生じる失敗(リスク)とは

エンバーミングが施された著名人、有名人

エンバーミングを施す前後にすること、できること

事故による損傷もエンバーミングなら修復できる可能性がある

 

「ごじょクル」のエンバーミング