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はいかい高齢者が事故を起こして誰かに損害を与えた。そんなときに対応する自治体サービスが生まれ出しています

記事公開日:2019.11.18/最終更新日:2020.03.16

2019年11月には朝日新聞の「デジタル朝日」に次のような見出しがあります『認知症事故の賠償救済に市民歓迎』。また2019年7月の日経新聞には次の見出しが『認知症事故、自治体が保険』。認知症の高齢者が、事故などを起こしてしまい、他人に損害を与えてしまった、そんなときにその損害賠償を自治体がサポートするサービスのようです。

国も考えようとしてはいるようです

認知症の高齢者の「はいかい」心配ですよね。最近頻発している高齢者が運転する死亡事故も悲惨、心配ですが、はいかい高齢者が誰かの大切な物を壊したとか、誰かに莫大な損害を与えてしまったとか、十分に有り得そうです。政府は2013年に「認知症高齢者等にやさしい地域づくりに係る関係省庁連絡会議」を設置して、内閣府、消費者庁、金融庁、総務省、法務省、文部科学省、農林水産省、警察庁などが横断的に集まり施策を検討しているようですが、連絡会議自体の開催は年に1回。現時点でも連絡会議のままで、具体的な施策までは踏み込めていないようです。おそらく財源が課題なのでしょうね。これらの動きは第5回の連絡会議資料として提出されている「認知症高齢者による事故等の実態把握等に関する検討等について」にあった一つの事故がきっかけだったということが分かってきました。

認知症高齢者が引き起こした列車事故が契機

2007年に列車と衝突して認知症高齢者が死亡するという事故が発生しています。このとき亡くなった高齢者側ではなく、事故によって列車運行に支障があったとしてJR東海が認知症高齢者遺族に720万円の損害賠償を請求します。一審の名古屋地裁は請求どおり720万円の賠償を認めました。遺族は控訴し二審名古屋高裁は、360万円に減額の判決。二審判決に対しては被告、原告ともに不服として上告し、2016年3月に最高裁で遺族の責任は問わないという逆転判決が確定します。しかしこの判決を受けて、認知症高齢者を抱える家族にはどこでも同様の損害賠償請求が起こりうる可能性があることが注視されました。このことは国会の予算委員会でも質疑が行われ、安倍総理大臣は、連絡会議で検討させると答弁しています。その後の動きを見ると先に書いたように政府、国としては手の打ちようがないというのが実情のようで、今後の施策としては、地域での対応を求めている内容となっています。

フロントランナーはまたしても神奈川県大和市

そんな状況を受けて真っ先に動いたのは神奈川県大和市!流石フロントランナーですね。判決が出た翌年の2017年に「はいかい高齢者個人賠償責任保険」という制度を発足させています。大和市では認知症高齢者をサポートする制度がいくつか存在していて、その中には「はいかい高齢者SOSネットワーク」というものがあります。これは、はいかいのリスクがある高齢者をその家族が高齢者の個人情報、認知症の程度、身体の特長などを登録し、はいかい行動で姿を消した時には地域全体で、早期発見・保護に努めるというものです。そしてこのSOSネットワークに登録すると、登録者が被保険者となって、他人の財物を壊したり、他人に怪我をさせたりしたことにより法律上の損害賠償責任を負った場合に備え、市が契約者となって賠償責任保険に加入し、なにかしでかしたときには保険金で対応するという制度です。市のホームページによると補償額は最大3億円で、次のようなときにも保険が適用されるようです。

・線路への立ち入りで電車等を運行不能にしてしまった。

・お店の商品を落として壊してしまった。

この保険があれば、先のJR東海の訴訟のような場合でも対応してもらえるということになりますね。

 

大和市を先頭に、各地で同様のサポートを取り入れる自治体が生まれだしているようです。日経新聞の2019年7月時点では全国で約20が、11月の朝日新聞では約40の自治体となっていました。認知症高齢者に優しいまちづくり、とても素晴らしい行政サービスですが、全国全ての自治体が対応できるかと言われると難しいかもしれないです。ただ、大和市のようなまちづくりをしている自治体に移住したい、という人が増えていくのかもしれません。