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友引が無くなるかもしれない2033年問題とは?

記事公開日:2017.03.30/最終更新日:2023.03.28

耳にしたことがある人もいるでしょう「2033年問題」。日本の冠婚葬祭は、暦(こよみ・天保暦/旧暦)を大きな拠り所にしています。大安、仏滅、友引など、行事・祭事の日を決める上で重要な暦が大きなトラブルに見舞われそうなのが2023年問題です。ここでは、どんな問題が起こっているのか、簡単にわかりやすく解説してみましょう。

 

暦(天保暦)とは?

日本は明治6年(1873年)から、万国共通のグレゴリオ暦(太陽暦)を採用し現在に至っていますが、それまで使用されていた天保暦(旧暦/太陰太陽暦)も並行して存在しており、特に日の吉兆、運勢を占う暦注のひとつである六曜(先勝・友引・先負・仏滅・大安・赤口)は私たちの生活に深く根付いています。

ただし旧暦は国の制度としては廃止されたものなので、現在は公に管轄する組織はなく、国立天文台や、天文学者、カレンダー業界などが天保暦のルールに従い(ルールに従うことで一致した暦となる)暦を作成していました。

天保暦は、月の動きを基本とする暦です。新月を月の初日(1日)として次の新月までの約29.5日を1ヵ月、1年を354日で計算します。そのままで運用していると季節がずれてしまうので、3年程度に1回閏月(うるうづき)を追加(その年の天保暦は13ヵ月となる)することで調整しています。

 

天保暦のルール

暦を作成する上でいくつかのルールがあります。その中で、代表的で分かりやすいものをご説明しましょう。

  • 新月を月の初日とする

地球から見て月と太陽が重なり、全く月が見えない新月のことを「朔(さく)」といいます。その朔日を月の初日つまり1日と設定します。

ちなみに「ついたち」は、「月の始まり」を表す「月立ち」が転じたものです。「朔」一文字でも「ついたち」と読みます。

  • 月は、二十四節気という季節を表す指標を元に決められます。

二十四節気は、交互に配される12の節気と12の中気で構成され、中気の日を含む月の名称が、その中気に該当する月名となります。

二十四節気

節気 中気 天保暦の月
立春 雨水  
啓蟄 春分 2
清明 穀雨  
立夏 小満  
芒種 夏至 5
小暑 大書  
立秋 処暑  
白露 秋分 8
寒露 霜降  
立冬 小雪  
大雪 冬至 11
小寒 大寒  

 

そして、初めに夏至を含む月が5月、冬至を含む月が11月、春分を含む月が2月、秋分を含む月を8月として、その前後の月を決めていくというのがルールです。

 

2033年に起こる問題とは

これまでは調整(閏月)によって不都合が生じることはありませんでした。しかし2033年には、ルールどおりに暦を作成することができないといういくつかの不都合が初めて発生します。その代表的な問題が次にあげる『9月か10月が無くなる?』問題です。

2033年の9月以降の新月(朔日=1日)と、天保暦ルールで月を決める要素である二至二分(夏至、冬至、春分、秋分)を、グレゴリオ暦で整理すると次のようになります。

新月(朔日) 二至二分(中気) 天保暦
9月23日 9月23日(秋分) 8月1日
10月23日   9月1日?、10月1日?
11月22日   11月1日
  12月21日(冬至) 11月

 

表をご説明しましょう。9月23日(グレゴリオ暦)の秋分は8月に配置されますが、新月なので必然的に天保暦の8月1日となります。そして、冬至は12月21日(グレゴリオ暦)なのでこの日はルール上天保暦の11月に含めなければなりません。すると12月21日の直前の新月が11月22日(グレゴリオ暦)なので、11月22日が天保暦の11月1日となります。

この2つの新月の間の新月の日、つまり天保暦で1日とすることができる日は10月23日(グレゴリオ暦)しかありません。お分かりでしょう、天保暦の9月1日と10月1日のどちらかが消えてしまうため、暦を作成することができないということなんです。

 

暦がつくれないと友引などの六曜も決められない

暦がつくれないと、六曜も決めることができません。

つまり、大安、仏滅、友引が存在しない1年になってしまうわけです。一般の私たちからすると、日取りを決める拠り所がなくなるわけですが、お葬式には友引を避ける、お祝いは仏滅を避ける、という慣習だけから見ると、忌日がなくなるだけなので却って決めやすいかもしれません。

この問題で最も頭を悩ませているのは、冠婚葬祭に関わる事業者、特に葬儀関係の事業者です。友引は葬儀関係の行事を避ける忌日という慣習が根強いため、友引を休業日としたり、設備点検の日にあてる事業者が非常に多い。

友引は、ある意味業界全体の非営業日でしたから、無くなると現代の競争社会では休まない事業者が出てくる可能性があります。出始めると、「我も我も」と業界全体が1年中営業を続けている、なんてことになり兼ねません。事業者にとっては大問題なんです。

 

2033年問題の解決策は?

公に調整、決定する組織がない以上、民間の知恵でなんとかするしかなさそうです。国立天文台(公の組織ですが暦の管轄がその職務ではありません)、天文学者やカレンダー業界でつくる一般社団法人日本カレンダー暦文化振興協会などが、問題の解説と解決方法を提案しています。冠婚葬祭だけでなく、六曜がないとなんとなく物足りなく感じるのは日本人だからなんでしょうね。まだ時間的な猶予があるので、それまでには共通する解決策が生まれると信じて待つことにしましょう。

 

参照

国立天文台

(一社)日本カレンダー暦文化振興協会