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遺産分割制度の見直しについて

記事公開日:2017.09.13/最終更新日:2020.03.17

2017年7月18日に、法務大臣の諮問機関である法制審議会の相続部会が、故人の住宅や預貯金の遺産分割について見直す試案をまとめました。現在(2017年8月1日から9月22日まで)この試案に対するパブリックコメントを募集しています。

※電子政府(e-Gov)パブリックコメント該当ページ:

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=300080158&Mode=0

 

このパブリックコメントを受けた後に審議会は年内に民法改正要綱案をまとめ、法務省は来年の通常国会での法改正を目指しているそうです。まだ先の話ですが、ごく身近な話でもあるので、どのような改正なのか簡単にご説明しましょう。

遺産分割から住居を外す

現在は住居も遺産分割の対象となっています。そのため、複数の相続人が遺産を分割する場合には住居を売却した上で分割する場合が起こりえます。そうなると住居に住んでいる(多くの場合は)配偶者が住まいを失う可能性が高かったのです。それを防ぐための改正案で、その概要は次のとおりです。

該当者:婚姻期間が20年超の夫婦

適用条件:夫婦の一方がもう片方に対して、住居不動産の全部または一部を遺贈または贈与した場合

遺産分割の方法:住居を分割の対象から外し、配偶者への贈与を認める。住居を除いた残りの財産を遺産分割の権利を持つ相続人で分割する

なお、法務省の審議会ですので贈与税に関しては言及していませんが、立法の目的が故人の配偶者保護にあることを考えると、税制においても特例措置が設けられる可能性が極めて高いと思います。

仮払い制度の創設(明文化)

現在の制度では、故人が亡くなった直後から遺産分割が終了するまでは、故人の預貯金の引き出しが難しくなっています。(2016年12月に預貯金は遺産分割の対象であるとの判断を最高裁が下しています。)

故人が生計を担う人物だった場合には、生活費や葬儀費用の支払いに窮してしまう可能性があったのですが、それを防ぐために、一定限度額までは家庭裁判所の判断を待たなくても引き出せるようにする、という改正です。

そのほか

上の2つが大きな改正試案のポイントですが、このほかに次の試案が盛り込まれています。

  • 一部分割の明文化

遺産分割に関して当事者間で争いが生じ、分割の確定が遅れる場合に、一部分のみの分割を可能とする

  • 共同相続した共同財産の処分に関する現状に即した整備

現行制度では、共同相続した財産を一方の相続人が処分することを禁じていない。ところが処分された共同財産の遺産分割のルールが明文化されておらず、また判例もないため、現実的に起こりうる(現に発生している)事象のトラブル発生を回避するため、法律で明確化する

 

以上が審議会試案のポイントです。国会で議論になるような内容ではないので、法務省の目論見どおりに改正は進みそうです。国民生活にも影響あることなので、動向はチェックしていきたいと思っています。