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【BOOKガイド】さまよう遺骨―日本の「弔い」が消えていく

記事公開日:2019.09.05/最終更新日:2023.05.16

読了予測:約5分

今日ご紹介する書籍は、NHKの「クローズアップ現代+」が現代の弔いをテーマとして取り上げた5本の番組『あなたの遺骨はどこへ~広がる”ゼロ葬”の衝撃~(2016年9月放送)』『相次ぐ”墓トラブル”~死の準備の落とし穴~(2017年5月放送)』『あなたの遺骨はどこへ!? ~広がる新たな”処分”(2017年8月放送)』『あなたほどうする?お墓・遺骨の悩み(2017年12月)』『急増する”墓じまい”新たな弔いの形とは(2018年4月放送)』の内容を書籍化したものです。番組放送時から大きな反響を呼んだ、現代の日本社会が抱える大きな課題を明らかにしています。

 

書籍名称:さまよう遺骨―日本の「弔い」が消えていく(NHK新書)

発行者:NHK出版

価格:842円(税込)

販売店:全国の書店、インターネットストア

書籍の概要

本書の内容はこれまでこのサイトでもご紹介してきた、葬送、弔い、埋葬、遺骨などに関して現代日本で起きていることに関するまさに集大成ともいえるものです。引き取り手のない遺骨の急増とその対応に苦慮する自治体。増加する無縁仏に対応できない満杯の納骨する場所。どこにも納めることができない遺骨の行き先。現代のお墓の意味や意義、新しい埋葬の形。新しいニーズを満たすために登場した自治体の取り組みと民間のサービスなど。

家制度の崩壊、地方から都市への人口流入、少子高齢化社会の到来、一人暮らし高齢者の急増など、日本の伝統だった地縁・血縁社会の崩壊した現代社会が、これからの葬送におう向き合っていうのかという社会の課題を浮き彫りにしています。

最期に、死生学、生活設計論を専門にする第一生命経済研究所主席研究員である小谷みどりさんが寄稿を寄せています。そこで、遺骨をさまよわせないためにできること、が提案記されています。

かなり重い内容の書籍ですが、全ての人、1人ひとりが自分の死後のことを真剣に考えなければいけない時代であることを、改めて痛感します。その一方でもしかしたら、100年後、200年後の世界には「弔い」という言葉がなくなっているのかもしれない、そんな諦めにも似た感情も抱いてしまいました。

目次

はじめに──「家族」に忍び寄るひずみ

遺骨はいったいどこへ行くのか

遺骨に翻弄される人々を追う

現代における弔いの在り方

第一章 遺骨が捨てられる?!

増加する遺骨の置き去り

遺骨が落し物として届けられる

身元判明でも引き取り手のない遺骨

さまよう遺骨と対峙する自治体

引き取りを拒否される遺骨

遺族にたどりつけないという現状

合葬される無縁遺骨

通帳に遺された五十万円の意味

合葬墓に納められる遺骨

「八二九番」の男性

「せめて無縁“仏”にしてあげたい」

遺骨を抱え込む自治体

大量の遺骨の扱いに苦しむ浜松市

処分される無縁遺骨

黒いかたまりに変化する遺骨

火葬後の灰を売却する自治体も

多死社会の到来

増え続ける一人暮らし高齢者

生活保護を受ける高齢者も増加

増加の一途をたどる葬祭扶助費

宙に浮く「遺留金」

第二章 遺骨を手放したい人々

「預骨」~遺骨を預かるサービス

「借金してまで墓は買えない」

大きな負担となる墓コスト

「迎骨」~遺骨を引き取るサービス

別れた夫の遺骨

「送骨」~遺骨を郵送するサービス

両親の遺骨と暮らし続ける男性

「自分の暮らしで精一杯」

新しいサービスに救われる遺族たち

遺骨を預けたまま音信不通に

「骨なんか、捨てちゃっていい」

妻から引き取りを拒否された夫の遺骨

墓がもてない事情と散骨

拡大する散骨サービス

父親の遺骨を手放すとき

手軽さが魅力の散骨サービス

あいまいな散骨ルール

「処分」としての散骨

遺骨を火葬場から持ち帰らない

遺骨でつくる仏像

増加する単独世帯

家族の縮小化と未婚率・離婚率の上昇

家族の役割を担う葬儀会社

代々の墓に入れない人たち

日本の「弔い」は消えていく

第三章 急増する「墓じまい」と新たな弔いのかたち

墓は受け継ぐものという考え方

番組に寄せられた「墓じまい」への声

墓じまいがブームに?

墓じまい要らずの墓

無縁墓にしたくない

墓じまいがもたらした平穏

煩雑な改葬手続き

電話一本で墓じまいの代行を依頼

「墓を残しておくほうが心苦しい」

墓じまいしたあとの遺骨の行き先

「迷惑をかけたくない」

死後を第三者に託す人たち

墓参りは「迷惑」か

増加の一途をたどる無縁墓

無縁墓の対応に悩む自治体

自治体が次々と合同墓を設置

スマートフォンのなかで故人をしのぶ

生前に家族へのメッセージ動画を撮影

一人息子への思い

横のつながりの墓

墓のない多様な弔いのかたち

葬式の小規模化も進む

ライフスタイルとともに多様化する弔い

故人も家族も安心できる弔い方を考える

第四章 誰に死後を託すか

終活ビジネス、新規参入続々

墓石業者が倒産

倒産した会社の霊園に眠る死者たち

価格競争の末に業績が悪化

「お墓を建てる気力がなくなった」

裏切られた契約者

経営者を直撃

踏みにじられた夫婦の思い

顧客の信頼を裏切る終活トラブル

生前契約を市がサポート

思い詰めた姉妹を救ったエンディング・サポート

おしどり夫婦、また一緒に

横須賀市が始めた新たな試み

「わたしの終活登録」の利用者

機能した登録サービス

家族と友人に見守られ旅立った男性

利用者と市、どちらにもメリットがある事業

浮いた予算で学習支援事業

郊外を襲う急激な高齢化

大和市「おひとり様などの終活支援事業」

社会の変化に迅速に対応する台湾

安心して死んでいける社会のために

〈寄稿〉死者を無縁化させない社会とは 小谷みどり

「さまよう遺骨」はこうして生まれた

死後を託せる人はいますか?

福祉の対象を「ゆりかごから墓場まで」に

死後のことを考え、その意思を託す人を見つけよう

生前に準備しておきたいこと

血縁に頼らない緩やかな人間関係を築く

 

おわりに──「弔いを見つめ直すとき」