「救急医療情報キット」というアイテムを聞いたことはありますか?全国数多くの自治体で無料配布されている、医療に関する情報を入れて保管し、いざというとき(本人が意思を伝えられないとき)にそこに記録されている情報を、医療行為に役立てるというものです。
日本では東京都港区が初め
このような仕組みは、アメリカのポートランド市で30年近く前から導入されていました。日本では、明治学院大学の岡本多喜子教授が2007年3月に開催されたWHO会議でそのアイテムと仕組みを知り、高齢化が進む日本でも役立てることができないかと東京都港区に相談。港区は消防庁や医療機関との連携を成立させて希望する区民に無料配布したのが、きっかけです。
保管場所は冷蔵庫が最適
キットも仕組みも実にシンプル。500mlのペットボトルくらいの大きさのプラスチック容器の中に、生年月日や血液型、病歴や服薬中の薬の名称、かかりつけの医師、緊急時の連絡先などを記録した情報シートを入れておくだけのもの。それを冷蔵庫に保管するのです。なぜ冷蔵庫かというと、どこの家庭にもある保管スペースであること、ほとんどの家庭でキッチンにあるため場所を特定しやすいこと、冷蔵庫の扉に「救急医療情報キット」が中に入っていることを知らせるシールが貼れること、といった理由があります。
住んでいる自治体を調べてみましょう
「救急医療情報キット」を配布している自治体で、緊急時にその家庭に赴いた救急隊員や消防署員は、救急処理を施すとともに冷蔵庫を探して「救急医療情報キット」を取り出し、中の情報を医療活動に役立てるわけです。このように実にシンプルであるにも関わらず実に効果的であるため、港区の導入後は一気に全国の自治体に拡がりました。莫大な予算がかかるわけではないので、導入しやすい施策といえますね。ご自身が住んでいる自治体のホームページで「救急医療情報キット」と検索してみてください。自治体によって、配布場所や方法はまちまちです。まだ入手されていない方は早めに入手しましょう。
元が独り暮らし高齢者の医療支援という目的のアイテムでしたから、ほとんどの自治体は配布対象者を65歳以上の独り暮らし高齢者、若しくは高齢者のみの世帯。または障がい者手帳の保有者に限定しています。でも考えてみると、独り暮らしであれば高齢者以外でもリスクはありますよね。また、独り暮らしでない場合も災害などで一家揃って意思を伝達することができない大怪我をおうこともありえます。全世帯に拡げると予算面で難しくなるとは思いますが、この良い取り組みがもっと、エリアも条件も拡がっていくと良いですね。ちなみに、「おひとり様などの終活支援事業」、「エンディングノート」の配布、「ご遺族支援コーナー」など積極的な取り組みをしている神奈川県大和市は、年齢を問わずに配布を受けることができます。さすがですね、筆者が住んでいる横浜市は、残念ながら配布していませんでした。