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生前葬を行う前に知っておくべきこと

記事公開日:2016.06.08/最終更新日:2023.05.15

読了予測:約4分

生前葬という言葉を耳にするようになってきました。文字通り、生前(生きているうち)に、お葬式をあげる、という行為のことです。巷では、自分で自分のお葬式を執り行うのだから思い通りにできる、などと魅力的な誘い文句がうたわれていたります。ただし、お葬式はそんなに自分だけに都合よく考えれば良いというものではありません。ここでは、現代における生前葬の意味と意義を、お葬式本来の意味と意義を踏まえながら考えてみたいと思います。

生前葬を行う意味とメリットと言われていること

日本における生前葬の歴史は古く、江戸時代の文献に記録があるようです。だだし、社会での認知度は、著名人が生前葬を行うことであがったということがいえます。著名人が行う生前葬は、ほぼイベントといっても過言ではないでしょう。これまで生前葬を行った著名人には次のような方がいらっしゃいます。

  • 水の江滝子さん
  • 赤塚不二夫さん
  • 永六輔さん
  • ビートたけしさん
  • 桑田佳祐さん
  • テリー伊藤さん
  • カンニング竹山さん
  • SMAPメンバー合同で
  • 小椋佳さん

著名人の場合は、それまでの活動に一区切りをつけるときに、今までの自分を弔うという意味合いもあるようです。では、一般人が生前葬を行う意味やメリットはどこにあるのでしょうか。

生前葬を紹介する記事などでは、次のようなことがまことしやかに語られています。

  1. 生きているうちに行うことで、お世話になった人たちに自分の口からお礼を言うことができる。
  2. 自分のやりたいお葬式を行うことができる。
  3. 比較的不明瞭なお葬式の費用を、じっくりと吟味しながら検討することができる。
  4. 家族への負担を少なくすることができる。

でも、ちょっと待って下さい。1の「お世話になった人へのお礼」は別に生前葬でなくてもすることはできます。また、2〜4に関しては、自分が死んだ後のお葬式を行わないことが前提のお話です。生前葬を行っているから、お葬式をあげる必要はない、そんな単純なことでしょうか。

生前葬をすることで起きる問題とは

お葬式には、故人の生前の活動を称える場という意味合いもあります。このことだけに関しては生前に行っても問題はなさそうです。しかし、最も大きなお葬式の意味は、故人の冥福を祈る場であり、遺族や親族を慰める場だということです。これは生前では行えません。そもそもお葬式という儀式の場は、遺族、親族、知人、友人たちが、故人を偲んで見送るための場で、その主体は、見送る人たちにあって故人にはないと考えています。つまり、自分の言葉でお礼を言いたいとか、自分の好きなようにしたいから、という理由は、完全に自分中心の考え方であり、周りの人たちの気持ちを考慮していない発想だと言われてもしかたありません。そしてもうひとつ大きな問題点があります。

最近は無宗教のお葬式が増えているようです。しかし、その数はまだまだごくわずかです。キリスト教や神道を含めて、お葬式は宗教と密接な関係があります。信仰を持たない人が多くを占めている日本でも、先祖代々からの菩提寺をもちお葬式は仏教でという人が最も多いのが実情です。そしてどの宗教においても、生前のお葬式は認められているものではありませんので、生前葬は必然的に無宗教(宗教色のない、宗教家を呼ばない)のお葬式にならざるを得ません。無宗教式でお葬式をあげた場合には、菩提寺(仏教の場合)で埋葬してくれない、戒名を得ることができない、親戚に理解を得ることができない、法事(法要)の方法がない、といった問題点があります。

社会との関係性が希薄になってきているとはいっても、遺族は故人の死後も社会と少なからず関わりを持たねばなりません。そしてお葬式本来の意味を考えると、例え生前葬を行ったとしても、死後にはちゃんとしたお葬式を執り行うことが遺族のつとめということになります。このように考えると、生前葬を行うことで、費用を少なくすることができる、あるいは家族の負担を軽くすることができる、というフレーズは大きな間違いであることがお分かりになるでしょう。

生前葬はすべきでないのか?

では、生前葬はやってはいけないものか、というと決してそういうことではありません。これまでご説明してきた、生前葬とお葬式のもつ意味をしっかり理解したうえで、それぞれに役割を持たせれば良いのです。

生前葬は、ご自身が主体となったお礼の場という役割を持たせて、自分自身のお葬式であるという意識は持たないほうが良いでしょう。そして生前葬を行っても、自分の死後には遺族が中心になり、お葬式は行われるものだと認識してください。2回行うのですから、費用も家族の負担も増えることはあっても減ることはありません。

 

繰り返しになりますが、一番に考えていただきたいことは、見送る人たちの気持ちです。お葬式がもつ本来の意味を理解することで、生前葬に対して間違った認識を持たないようにしましょう。