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家族に繋ぐ想い。それがエンディングノートです

記事公開日:2020.05.18/最終更新日:2023.04.21

エンディングノートとは?

終活の基本でもあります

「終活」という言葉はすっかり社会に定着したようです。以前にも記事にした、楽天インサイト(東京都世田谷区)が毎年行っている「終活に関する調査」では、「終活」という言葉の認知度は約80%です。言葉というものは、興味や関心がない人の耳には届かないこともあるので、8割という数字から、日本では知らない人はほぼいない言葉となった、と言えるかもしれません。

そして同調査の「終活で準備しておきたいことは何か」という設問で、回答率が43.2%となったのが『エンディングノート・遺言の作成』でした。終活に取り組みたい人のおよそ半数がエンディングノートを書くことを検討しているということになります。

「終活」とともに「エンディングノート」という言葉も定着したということが言えるのでしょうが、まだご存じない人や、言葉は聞いたことがあるけどその実は知らない、という人もまだ居そうです。そこで、ここでは改めてエンディングノートとは何なのかをご説明したいと思います。

「終活」という言葉は、2009年に週刊朝日が連載した記事で、自分の死後に備える準備を「終活」と名付けたことが始まりです。その終活の一貫として、自分の死後に家族が困らないように、自分にまつわることをできるだけ網羅して書き記すノートを「エンディングノート」と称されるようになりました。2011年には、エンディングノートを題材とした映画(砂田麻美監督「エンディングノート」)も公開されて、同年の流行語大賞にもエントリーされています。

遺言状との違い(気をつけてください)

エンディングノートは、自分の死後に遺された遺族に対するメッセージというということになりますね。遺族に遺す文書というと「遺言状」を思い浮かべる人が多いでしょう。では、遺言状とエンディングノートの違いは何でしょうか。それは法的な拘束力があるか否かです。遺言状で定めることは、財産分与や相続に関する内容になりますが、正式な遺言状には、その内容を遵守しなければならない法的な裏付けが存在します。民法が定め、認めている文書なのです。一方でエンディングンートは、法的な要求から誕生したものではなく、社会のニーズを汲んで発生した概念となるために、そこに書かれている内容は法律的に守られることはありません。このことから考えるに、遺言状は自分の意思を伝えることに重きが置かれているのに対して、エンディングノートは遺された家族のために記すことにその意義がある、ということが言えるのではないでしょうか。

遺言状は公正証書遺言と自筆証書遺言に大別されます。公正証書遺言は、公証人が証人として関わることで、その正しさ、有効性を担保しています。自筆証書遺言の場合は、内容や形式に不備があると、遺言に記された内容認められない(無効となる)ケースも存在します。つまり一定の形式、要件を満たす必要があるわけです。一方でエンディングノートは、法的な背景がないこともあって、ルールや形式は存在しません。完全に自由に書いて良い、という点も遺言状とは大きな違いとなります。

終活の集大成にもなります

「終活」とは自分の人生をどう締めくくるのか、どう閉じるのか、さらに閉じた後には遺族はどうすれば良いのかを考えて、一つずつ解決していく行為です。解決していったことは、遺された家族に伝えなければ意味がなくなります。つまり「終活」の集大成がエンディングノートといことにもなるわけですね。

エンディングノートの種類

多種多様なエンディングノートが存在します

エンディングノートは、まさにフリースタイルなので、普通のノートに書き込んだり、パソコンのワープロソフトなどを使って入力したりしたものでも、全く問題はありません。ただ、完全に自由だとかえって書きにくいものです。それに、書き漏らしてしまう内容などが出てくる危険性もあります。そんな不便や不安を解消するために、現在ではさまざまなエデンィングノートが巷に流通しています。出版社や文具メーカーなどが、書店やネットショップで手に入るエンディングノートを販売しています。また、葬儀社、仏具店を始めフューネラルビジネスに関わるさまざまな団体・法人が無料でダウンロードできるエンディングノートを配布しています。最近では高齢者の終活サポートに積極的に取り組む地方自治体も出てきており、行政サービスの一貫としてエンディングノートを無償で配布しているところもあります。

それぞれの代表的な例をあげてみましょう。

書店等で販売されているエンディングノート

○ もしもの時に役立つノート(コクヨ)

エンディングノートの売上ではトップだそうです。ビニルカバーに覆われているので保管・保全性が高そうです。また冒頭には、エンディングノートを記載することで回避できるトラブルを、事例としてマンガで解説しているので、エンディングノートを書くことの意味や意義を理解しやすくなって、自分ごととして、エンディングノートを書いてみようという意欲をかきたてる導入となっているのも特徴です。構成は、「自分のこと」、「資産」、「気になること」、「家族・親族」、「友人・知人」、「医療・介護」、「葬儀・お墓」、「相続・遺言」から成っています。

○ 星の王子さまエンディングノート(学研)

サン・テグジュペリの「星の王子さま」の中に出てくる言葉とイラストが満載されたエンディングノートです。これはもう書籍の1つと言っても良いでしょう。星の王子さまには自分の人生を見つめ直すきっかけになるような言葉が数多く散りばめられている名著ですが、このエンディングノートもその言葉を読みながら、自分の人生を振り返り、大切な人に遺す言葉を記していく、そんなことを期待してつくられたものだと思います。ただし、誠に残念なことに現在学研では在庫切れとなっているため、古本でしか入手できません。希少なためにプレミアムがついて価格がかなり高額となっています。

○ ~My Life これまでとこれから~ 自分史年表+エンディングノート(K&Bパブリッシャーズ)

タイトルどおり、まず自分が生きてきた人生を振り返るために自分の歴史を書き記し、それを踏まえた上で、遺された家族に伝えるべきことを整理していく、という書き進め方を採用しています。その構成は、「自分史年表」、「私と家族の情報」、「伝えたいこと」、「お金のこと」、「健康の基本情報」、「告知・終末医療」、「葬儀・お墓」、「遺言状」、「連絡先リスト」、「100年カレンダー」となっています。100年カレンダーというのは巻末の付録となっていますが、1963年から2035年まで100年間のカレンダーです。自分の歴史を振り返るとき、またこれからの人生設計に役立ててほしい、という意図から掲載されています。

○ 私の生き方連絡ノート(EDITEX)

医療に特化したエンディングノートです。ページ数も少ないため、書きやすいと思いますが、医療以外のことは別に用意しないと、伝えたいこと全ては網羅することはできないために、医療以外のことを記すためには、もう1つ別のエンディングノートを用意する必要があります。

○ もしもの時に安心!エンディングノート(プレジデント社)

弁護士の監修によるエデンィングノートです。項目も幅広く、クレジットカード情報やスマートフォンのパスワード情報など、トラブルが発生しやすい項目も盛り込まれています。構成は、第一章「自分のこと」、第二章「お金・資産のこと」、第三章「家族・親族・友人」、第四章「自分のもしもの時」、第五章「自分の大切もの」となっています。

無料でダウンロードできるエンディングノート

○ Ending Note(Microsoft)

Microsoft Office社が提供するワード形式のテンプレートです。書き込みやすく、画像を貼り付ける箇所(例えば自分の愛読書など)も用意されているところが特徴です。ワードのテンプレートですが、薄い青地を背景にしたシンプルかつ飽きのこないデザインは秀逸だと思います。構成は、第一章「私に関すること」、第二章「メッセージ」、第三章「医療」、第四章「葬儀」、第五章「財産」、から成っています。

○ My Happy Ending Note(ラプラージュ綜合法務行政書士事務所)

行政書士事務所が作成しているので、書店で販売しているプレジデント社のエンディングノート同様に、相続や契約に関する情報を書くボリュームが多いのが特徴と言えます。構成は、①「私の宣言」、②「私の人生史」、③「住まいについて」、④「介護、医療について」、⑤「食事について」、⑥「服装について」、⑦「財産、管理について」、⑧「自分らしい最期とお葬式について」、⑨「お墓と供養について」、⑩「伝えたいこと~あなたの思いお言葉に~」から成っています。

○ ending note 百人百想(スペース・メニュー・ラボ)

「百人百想」というブランドで、仏壇・仏具の製造販売を行っている会社が提供しています。ブランド名がタイトルになっていますが、その名の通りに自分の歴史を振り返ることに全体の半分以上を割いています。構成は、Ⅰ「私の自分史 これまで歩んだ道・これから」、Ⅱ「私の記録 家族へ伝えること」から成っています。

○ Ending Note(日刊葬儀新聞社)

葬儀関係の業界紙を発行しているところが提供しています。全体が130ページを超えるという、かなりのボリュームです。全てを埋めるためには、じっくりと時間をかけて取り掛かる必要がありそうです。構成は、第一章「自分史」、第二章「メッセージ」、第三章「医療・介護」、第四章「葬儀」、第五章「財産」から成っています。香典返しに関する希望や、形見分けに関する希望なども記すところがあり、考えうる全ての項目が網羅されているのではないかと思える大冊です。

地方自治体が配布しているエンディングノート

以前の記事「広がるか?自治体の終活サポート」でも記したように、現在では以下のほかにも数多くの地方自治体がエンディングノートの無償配布を始めています。お住まいの自治体のホームページなどで確認してみてください。

○ 東京都狛江市

○ 神奈川県大和市

○ 神奈川県厚木市

○ 埼玉県鶴ヶ島市

○ 埼玉県北本市

○ 埼玉県八潮市

○ 埼玉県深谷市

○ 栃木県足利市

○ 愛知県豊川市

○ 滋賀県守山市

○ 奈良県橿原市

○ 大阪府堺市南区

○ 福岡県宇美町

○ 大分県杵築市

(参考)

○ 東京都府中市(有償配布)

エンディングノートの書き方(書く内容)

愛情込めて家族に遺す言葉を記す

既に記したように何を書いても良いエンディングノートですが、その第一の目的は、自分の身に何か起こった時に、家族がその対応に迷いや悩みを抱えないようにするためです。遺されたエンディングノートを見て、故人の希望を理解した上で行動することが可能となります。エンディングノートは、家族に対する大きな愛情の1つだと言えるでしょう。そう考えてみると、その万が一のときに伝えておきたいということは、自ずと分かってきます。市販されているエンディングノートも無料でダウンロードできるエンディングノートも、それぞれの特徴はありますが、書き記すべき項目というのは、次のようにある程度共通しています。

【財産・資産関係】

前述したように、財産分与・相続に関して法的な拘束力はありません。ただし、どこにどれだけの財産・試算があるのか、家族はその全てを知らないことのほうが多いでしょう。また、自身でもうろ覚えのケースもあるかもしれません。一度棚卸しをすれば、後は定期的にメンテナンスするだけで大丈夫です。

○ 預貯金(金融機関・口座番号・名義)

○ 金融機関から自動引落しされている商品・サービスの一覧

○ 有価証券(証券会社・口座番号・名義)

○ ゴルフ会員権、金、プラチナ、先物取引等の資産

○ 不動産(種別、名義、所在地、登記簿記載内容、登記書保管場所)

○ 美術品・貴金属・骨董品・自動車などの動産

○ 貸し金庫・レンタルルームの場所と保管物

○ 貸付金(貸している相手の名前、連絡先、金額、返済計画等)

○ 借入金(借入先、金額、返済計画、残高)

○ 債務保証人になっている場合は、その詳細

○ クレジットカード情報(カード名称、カード番号、連絡先)

○ 電子マネー・ポイントカード(その種類と名称、連絡先)

○ 保険(保険種別、保険会社、被保険人、受取人、証券番号、証券保管場所、保険金額、保険期間、保険料)

○ 年金(基礎年金番号)

【デジタル終活】

最近、終活の必要性が大きくなっているのが、デジタル遺品です。遺族が困らないように、整理しておきましょう。

○ パソコン(ID、パスワード、メールアドレス)

○ スマホなど携帯、タブレット(ID、パスワード、契約会社、電話番号、名義、料金プランなど)

○ WebサイトやSNS(会員になっている、あるいは利用しているサイトの名称、ID、パスワード)

なお、以前(2019年12月25日)記事にした、デジタル終活を支援する「Digital KeePer」のような新しいサービスも登場しています。ID(アカウント)とパスワードは非常にデリケートな情報です。エンディングノートは、何かあったときに家族の誰もが手にできる、見ることができるところに保管されていないと、その役割を果たすことは難しいと考えます。それ故、デジタル関連の情報は、エンディングノート自体には明記せずに、その保管、管理方法を記しておくほうが良いかもしれませんね。

【家族や親族】

同居している直系の家族同士であれば、記すまでもないかもしれません。しかし、エンディングノートは、家族がいる人だけのものではありません。一人暮らしの人が亡くなった場合には、その後の対応を行政(自治体)が行います。故人の遠方にいる家族や親族が分からない場合には、遺体は無縁仏として埋葬されてしまいます。そんな場合にも活用できるように、多くのエンディングノートには、家族。親族を記入する欄が設けられています。

○ 家族一覧(名前、続柄、生年月日、現住所、連絡先)

○ 親族一覧(名前、間柄、生年月日、現住所、連絡先)

○ 家系図

※ 家系図を作成することは、自身のルーツを明確にし、それを後世に引き継ぐという意味合いから、最近では終活の一貫として注目されています。

【友人・知人】

これこそ、同居している家族でもその全容を把握しているケースは稀だと思います。何かあった時に連絡しなければいけない相手を整理しておきましょう。

○友人・知人一覧(名前、関係性、現住所、連絡先、葬儀案内の要・不要の別)

【医療・介護】

エンディングノートの存在が活きるのは、亡くなった後とは限りません。事故や病気で、自らの意思を表示できなくなった場合の治療や介護において必要な情報もあります。

○ 疾患を持っている場合は病名と常用薬

○ かかりつけの医療機関

○ 過去に罹患した病気

○ 自分が意思疎通能力を失ったときに延命措置を望むか否か

○ 臓器提供や献体に関する項目(ドナー登録している場合はその情報、献体登録している場合は団体名等)

○ 介護を要する身体になった場合の希望(判斷能力を失った場合の成年後見人の希望、介護をお願いしたい人や場所、介護費用の捻出方法、その他の希望)

【ペットについて】

飼い主を失ったペットをどうすればよいか考えておくことも大切な終活です。

○ ペットの種別、名前、性別、年齢

○ かかりつけの動物病院(名称、連絡先、獣医名)

○ 面倒を見てもらいたい人

【葬儀・墓に関して】

○ 葬儀に関する希望(実施の有無、規模、宗教・宗派、費用、喪主、遺影、そのほかの希望)

○ 墓に関する希望(購入した墓所があれば場所、祭祀継承者)

【財産分与・相続に関して】

エンディングノートには法的な拘束力がありませんので、拘束力のある遺言状に関する事柄を記しておきましょう。

○ 遺言状作成の有無(公正証書と自筆の別)

○ 依頼した専門家の名称・連絡先

【遺品】

○ 遺品整理に関して希望があればその事柄

【メッセージ】

○ 家族への想い

○ 友人・知人への想い

「エンディングノートの種類」で市販されているものと、ダウンロードできるものの構成(目次)を記載しましたが、ご覧になってお分かりのように、その内容はほぼ似通っています。

エンディングノートが叶える別の目的

これまでの人生を振り返る

エンディングノート本来の目的は、繰り返しになりますが、家族(家族がいない場合は、介護を託す人、自分の死後を託す人)に自分の想いを託すことです。つまり家族のために書き記すのですが、エンディングノートにはもう1つ別の顔が存在しています。「エンディングノートの種類」でさまざまなエンディングノートの構成(目次)をご紹介しましたが、多くのノートには「自分史」とか「自分の人生」「自分について」という項目が存在しています。『自分の人生を振り返って言語化してみましょう』ということなんですが、エンディングノートになぜそのようなことが必要なのでしょうか。「自分史」はエンディングノートよりも遥か昔からある概念です。自伝、自叙伝とも言い、まさに自分の人生を総括することが目的です。もっとも、実際に自分史を執筆する人は、それなりに功績や実績を重ねられた成功者である場合が多かったのがこれまでの傾向でした。多くの出版社で、自分史を自費出版するサービスも提供しています。つまり、平凡な人生を歩んできた人には縁遠い存在と言えるものだったのです。しかし、全ての人にとって人生は1つしかないかけがえのないものであり、それは誰かの人生と比較して優劣をつけるものではないはずです。そして自分の人生を振り替えってみることで、得られるものがあります。それは『過去の自分を客観的に見ることで、自分の体験や経験を再評価することができる』ということです。人には誰しも「後悔」「挫折」「失敗」、逆の「成功」「悦び」などの経験を経ています。その瞬間は感情が先に立つので客観視できなかったことを、年月を経た後に改めて検証することで何か新しい発見があるかもしれません。起こった事象に対する解釈や、自分に対する評価が変わってくるかもしれません。そして、そのことを通して、現在の自分自身を見つめ直し、これからの人生の指針を改めるきっかけにすることができる。これが自分史を書くことの最大メリットとされています。

死後を考えるということは、これからの人生を考えること

エンディングノートを記している時は、まだ歩むべき人生が残っています。つまりその段階では、『自分の死後に遺された家族が困らないため』だけでなく、『大切な家族のため、自分は人生の終わりに向けて、これからどう生きていくか』を考えることも重要なのです。この2つの目的は、おそらく切り離して考えることができない考え方であり、限りなくイコールなのだと思います。それ故、多くのエンディングノートに、自分の歴史を振り返る項目が盛り込まれているでしょう。

改めて整理してみると、エンディングノートを記すことで、

① 自分の死後に家族に想い(願い)を託すこができる

② 自分の人生を振り返り、見つめ直すことができる

③ 残りの人生の歩み方を考えるきっかけとなる

という3つの大きな意義のある目的を達成することができる、というわけです。

ところで、「自分史」部分については、書いている(思い出している)中で、今はすっかり疎遠になってしまった友人や知人との当時の結びつきが鮮やかに浮かび上がることもあるでしょう。交流を再開させるきっかけにもなり得るかもしれませんね。

 

細田守監督のアニメーション映画に「サマーウォーズ」という作品があります。2年に一度くらい日テレで放映されるときは、ラスト近くで主人公の健二くんが言う「よろしくお願いしまああああす!」がTwitterのタイムライン上に溢れるという超人気先品ですね。映画の中で、健二くんが逗留する陣内家(モデルは真田家でしょうね)の当主である『栄おばあちゃん』が突然亡くなります。悲しみにくれる家族の前に、『家族へ』と書かれた栄おばあちゃんの手紙が出てきます。手紙を読んだ陣内家一同は、悲しみを乗り越えて一致団結する、というストーリーなのですが、この手紙は、遺言ではなく、まさに家族に遺したエンディングノートだと筆者は考えています。

 

栄おばあちゃんの手紙(映画「サマーウォーズ/原作・監督:細田守、制作:サマーウォーズ製作委員会」から)

家族へ

まぁまずは落ち着きなさい

人間落ち着きが肝心だよ

葬式は身内だけでさっさと終わらせて

後はいつも通りに過ごすこと

財産は何も残してはしないけど

古くからの知り合いの皆さんが

きっと力になってくれるだろうから心配はいらない

これからもみんなしっかりと働いてください

 

それともし侘助(わびすけ)が帰ってきたら

10年前に出て行ったきり、いつ帰ってくるかわからないけど

もし帰ってくることがあったら

きっとお腹をすかせていることだろうから

うちの畑の野菜や葡萄や梨を

思いっきり食べさせてあげてください

初めてあの子に会った日のことを

よーく覚えている

耳の形がじいちゃんそっくりで驚いたもんだ

朝顔畑の中を歩きながら

今日からうちの子になるんだよ、って言ったら

あの子は何も言わなかったけど

手だけは離さなかった

あの子をうちの子にできる

私の嬉しい気持ちが伝わったんだろうよ

 

家族同士、手を離さぬように

人生に負けないように

もし辛いときや苦しいときがあっても

いつもと変わらず家族みんなそろって

ご飯を食べること

 

一番いけないことは

お腹がすいていることと

一人でいることだから

 

私はあんたたちがいたおかげで

大変しあわせでした

ありがとう

じゃあね

 

細かなことは何も書かれていませんが、実に素敵なエンディングノートだと思っています。家族への想い、実はそれこそが一番大切なのですね。