卒塔婆(そとば・そとうば)の原語はサンスクリット語のStupa(ストゥーパ)です。中国に古代インドから仏教が伝来したとき「卒塔婆」の漢字があてられたとされています。ストゥーパは仏塔のことで、仏教国のタイやスリランカ、発祥地のインドや、中国では現在でも仏塔のことを指します。
日本では、平安時代末期から鎌倉時代初期のころに、仏塔の形を模した板を板塔婆(いたとば・いたとうば)としてお墓の脇などにたて故人を供養するという慣習が始まったとされています。現在では一般的に、板塔婆のことを卒塔婆と呼び、梵字や戒名を記しお墓の脇にたてて故人の供養をします。もっとも浄土真宗は卒塔婆を建てる慣習がないなど宗派あるいは地域によっても微妙に異なります。ここでは一般的な卒塔婆供養について説明します。
卒塔婆に記すもの
卒塔婆は五輪の塔の形を模してつくられており、仏教において宇宙を構成する五大要素とされる「地・水・火・風・空」を表しています。卒塔婆の表には梵字で五大要素を意味する言葉が記されて、故人が宇宙に還元されるという願いを込めて供養する、という意味を持ちます。表面には梵字のほかに、故人の俗名(本名)や戒名、宗派の聖句(お経)が記され、裏面には供養を依頼する人の名前と卒塔婆を建てる日付が記されます。
いつ卒塔婆を建てるのか
納骨のときが最初の卒塔婆供養になります。一般的には四十九日の法要の後に納骨を行いますので、そのタイミングです。その後は、法要の都度、古くなった卒塔婆(前回の法要で建てた卒塔婆)を新しい卒塔婆に変えていきます。なお、卒塔婆の本数に決まりはありません。遺族や親族のそれぞれが一人一本の卒塔婆を建てても良いですし、「兄弟一同」「孫一同」のようにまとめて建てることもあります。
卒塔婆の費用
菩提寺にお願いするのが理想ですが、お墓が霊園にある場合は、霊園に申し込めば大丈夫です。霊園が、その家の宗派のお寺に卒塔婆の依頼をしてくれます。表書きは宗派により異なるので、きちんと宗派を伝えるように心がけましょう。なお、卒塔婆に記される文字は墨で書くため、お願いをするタイミングは墨字が完全に乾くまでの時間(乾ききらないと雨で文字が流されやすくなります)を考慮する必要があります。少なくとも1週間前にはお願いするようにしてください。
卒塔婆の費用は、サイズや地域によって異なりますが、1本2,000円から5,000円の範囲内が多いようです。卒塔婆はお布施とは異なり一本の費用が明確に決められていることが多いようですので、素直に聞いてみてください。
法要のたびに新しい卒塔婆と変えていくものですが、古い卒塔婆を処分せずにそのまま新しい卒塔婆が追加で建てられている、というお墓も散見されます。卒塔婆は供養のためには誰が建てても良いものなので、遺族にとって見ず知らずの人が建てた卒塔婆もあるでしょう。自分が建てた卒塔婆なら処分しやすいですが、そうでない場合は難しいかもしれません。古い卒塔婆が放置されたお墓は、荒れているように見えてしまうので、古いものから順番に処分するようにしましょう。お寺や霊園管理事務所に相談すれば処分の方法を教えてくれます。