超高齢会社会を迎えつつある日本。可処分所得をもっとも多く持っているのが60歳以上という構造の中で、消費を担うのも高齢者という時代になっています。それと同時に高齢者を巡る消費に関するトラブルも増加傾向にあるようです。今回は、2013年に消費者庁が公表した消費者白書を元に、高齢者の消費トラブルを紐解いてみましょう。
増える高齢者の相談件数
次のグラフは2007年を100とした、相談件数の推移です。
一目でかなり驚きのデータであることが見て取れます。全体の相談件数が減る中で、高齢者の相談件数は確実に増えています。消費の中心が高齢者になり、母数が拡大していることを理由のひとつだと考えることはできますが、65歳未満と65歳以上でこれだけの差が生まれるのはなぜでしょうか。振り込め詐欺も高齢者を狙った行為ですが、消費活動ではないのでこのデータには含まれていません。ただし似たような事例、つまり高齢者の弱みや情報不足につけ込む商法が多くありそうですね。
電話勧誘販売のトラブルが増加傾向
次のグラフは、高齢者の消費トラブルの内訳比率です。電話による勧誘販売トラブルが大幅に増加していることが分かります。電話は今に始まったツールではありません。ではなぜ今になって増えているのか、考えられる理由は2つあります。
- ひとり暮らしや、高齢者だけの世帯が増えていること
以前は、子どもや孫との同居も多く、電話をとるのは高齢者以外の家族のことも多く、また、高齢者がとっても家族にすぐに相談することができました。
- 高齢者はインターネットに親しんでいない
現代はインターネットに多くの情報を入手することができます。すべての行為において、より多く情報を入手している者が優位にたつことができます。つまりそこに生ずる情報格差に付け込まれてしまう、ということも考えられます。
相談が多いのは金融商品と健康食品
貯蓄をしている人が多い高齢者を狙った金融商品のトラブルが増えています。比較的分かりやすくテレビや新聞でも情報入手ができる「株式」ではなく、より複雑で情報を精査することが難しい「デリバティブ取引」や「ファンド」に関する相談が増えており、ファンド型投資商品に関する2012年4月の相談件数は2009年4月の件数の5倍超です。
また、テレビのショップチャンネルなどで一日中流れている健康食品関連のトラブルは急増しており、2011年度の相談件数(65歳以上)が1,982件だったものが2012年度は、ナント11,133件の5.6倍という結果が出ています。この2つの商品は特に要注意ですね。
終活に関するトラブルも増加傾向
終活を行う高齢者が増えることで、それに伴うトラブルも増えています。次のグラフは、お葬式に関する消費者からの相談件数推移です。全体的に増加傾向にありますが、65歳以上の高齢者が特に増えていることが分かります。
社会のトレンドを巧みに取り込み、情報弱者をターゲットにするのはいつの時代でも変わらないのかもしれません。そのような悪意ある事業者にだまされないために、早め早めに安心して任せることができる事業者を選択しておくことが重要ですね。また、終活に限らず、電話でも何でも勧誘があったら必ず身近な人に相談すること。もしも相談できる血縁者がいなかったら、契約する前に消費生活センターなどに相談しましょう。
高齢者を悪意から守るため、同居していない場合はなおさら、日々気をかけることが必要です。特に用事がなくても、定期的に電話をするように心掛けたいものですね。
消費生活センターでは、神戸学院大学の秋山教授による、『だまされる心理からみる高齢者トラブル』を公開しています。
また、『高齢者の消費者トラブル見守りガイドブック』を作成して公開していますので、一読してみて下さい。
参照:平成25年版消費者白書 特集「高齢者の消費者トラブル」