お葬式にはどれくらい費用がかかるものなのでしょうか?漠然と「高い」というイメージを持つ人が多いと思います。実際にかけている費用をアンケートで調べた結果(「第10回『葬儀についてのアンケート調査』(2014年(財)日本消費者協会)」)によると全国平均は約189万円でした。結構な高額ですね。最近では予算をかけない「小さなお葬式」を多くの葬儀社が売り込んでいますが、その理由もわかる気がします。そこで、どこに費用がかかっているのか、抑えることはできるのか、そして本当に高いのかでしょう調べて考えてみましょう。
お葬式の3大費用
お葬式の費用189万円の内訳は実は次のようになっています。
葬儀費用 約122万円
- 遺体を病院(あるいは自宅)から斎場(葬儀会場)に運ぶ運搬費
- 斎場(葬儀場)の施設使用料(通夜、密葬、本葬)
- 祭壇、遺影、お棺、骨壷、供花、位牌、枕飾りなどの祭壇まわりの費用
- 葬儀社スタッフ人件費
- 火葬場までの霊柩車、送迎車費用
- 葬費用、火葬場休憩室費用 など
宗教者関係費用 約45万円
- お布施
- お車代
飲食費用 約34万円
- 通夜ぶるまい、お斎での飲食費用
- お香典返し
小さなお葬式の費用
次のインターネットでも数多く見ることができる「小さなお葬式(=家族葬)」の費用内訳と比べてみましょう。小さなお葬式の費用もさまざまですが、概ね40万円~50万円が中心価格帯のようです。
葬儀費用 50万円
- 遺体を病院(あるいは自宅)から斎場(葬儀会場)に運ぶ運搬費
- 斎場(葬儀場)の施設使用料(通夜、密葬、本葬)
- 祭壇、遺影、お棺、骨壷、供花、位牌、枕飾りなどの祭壇まわりの費用
- 葬儀社スタッフ人件費
- 火葬場までの霊柩車、送迎車費用
- 火葬費用、火葬場休憩室費用 など
宗教者関係費用(お布施やお車代です) 0円
飲食費用(通夜ぶるまい・お斎の飲食、香典返し) 0円
葬儀費用内訳は、一般の葬儀と同等のメニュー構成です。祭壇や装飾関係などランクは低いかもしれませんが、70万円超の金額差は大きいですね。この差を可能にしているのが少人数ということです。葬儀社によって異なりますが、概ね10人を「小さなお葬式」の目安にしています。一般的なお葬式ともなると会葬者は100人を超え、多いと500人、1,000人ということも。当然それだけの会葬者をさばくためには、5人、10人、それ以上の、それもその時間内はおそらく選任となるスタッフが必要となります。会場も1日に引き受けられるお葬式は2件がやっと。それが10人規模であれば、1つのお葬式のスタッフは1人でも十分対応可能で、また同時に複数のお葬式を行うこともできるでしょう。それがこの金額でできる理由です。
そして安いもう1つの理由は、宗教関係者へのお礼、会葬者への飲食の提供がないことです。もし宗教者にお経や、お祈りをお願いするなら、その費用は必要となります。また飲食も同様ですね。
費用を抑えるには
とにかく費用をかけたくない、ということなら、葬儀社が提供する「小さなお葬式」プランを選ぶことです。小さなお葬式は会葬者が限定されるので、「親族や故人と縁ある人との関係性もあるので、小さなお葬式にはできないけど費用は抑えたい」そんな希望をもっている場合には、金額の変動幅が大きな葬儀社に支払う、施設費、祭壇まわり費、飲食費などを見直しましょう。複数の葬儀社から見積もりをとって比較することで、お葬式にかかる総費用を少なくすることができます。
実際の収支でみると
お葬式は経済活動ではありません。ですので、収支というと不謹慎かもしれませんが、わかりやすくするために敢えて使わせていただきます。お葬式の費用は支出として出ていきます。これは一般のお葬式も小さなお葬式も変わりありません。一方でお葬式には入ってくるお金、つまり収入もあります。これがお香典です。お香典は見込むものではありませんし、その金額は幅もあり、またいただいた額に見合うお香典返しも必要です。しかし実態としては会葬者が多いお葬式ほど、いただくお香典の金額は莫大な額になることもあります。収支をしてみると、お葬式の費用をそっくり相殺することができた、出ていくお金は僅かで済んだ、という話も見聞きしています。
一方で小さなお葬式は出ていくお金は小さいけれど入ってくるお金も小さいか、全く入ってこない(お香典がない)こともあり得ます。つまり小さなお葬式は出ていくお金だけがすべてとなる可能性もあるわけです。そう考えると、場合によっては小さなお葬式を選ぶことで収支が悪くなることもありえるということですね。
ここで筆者が言いたいのは、費用の面だけでお葬式を考えないでほしい、ということです。費用以外の理由から「小さなお葬式」を選択する人もいるでしょうが、そうでない場合に考えるべきは、良いお葬式にすること、多くの人に故人を弔い見送ってもらうことです。そうすれば「高いお葬式」とならずに済むかもしれませんよ。