お葬式をやらない人、やりたくない人が増えているような気がします。理由を想像するに、多くの参列者が訪れるお葬式は仰々しく大切な人とのお別れに相応しくないと考えている、お葬式にかける費用が勿体ないと感じている、信仰する宗教がないため宗教的な儀式であるお葬式をする意味がないと考えている、こんなところでしょうか。もしも親が「葬式はしないでくれ」と言ったらどうしますか?
その理由を確かめましょう
お葬式は「面倒くさいもの」と漠然と思っている人も多いでしょう。日常的な事ではないのでやり方も分からない、やらなくていいならそれに越したことはない。そんな風に考える人がいても不思議ではありません。また、「故人(親)の意思は大切にしなければ」という考えも分かります。でも少しだけ待ってください。子ども(遺族)の人生はその後も続きます。お葬式は遺族にとっても意味あるものです。そこでなぜ「葬式はしないでくれ」と言ったのか、その理由を聞けばどうすることが一番良いのか見えてきそうです。
希望に沿うお葬式もあります
ここでは『お葬式はしなくてもいいもの』という前提ではなく、親の本当の希望に沿うにはどうすればいいのかを考えてみたいと思います。
理由が「仰々しいお葬式は嫌だ」だったら、最近増えている「家族葬」などと称されている小人数のお葬式を勧めてみてはどうでしょう。
理由が「費用が勿体ない」だったら、派手な祭壇など使用しない手作り感あるお葬式をあげてくれる葬儀社を探して、費用をかけないお葬式も可能です。
理由が「信仰する宗教がない」だったら、これも最近増えている自由葬、宗教者を招かずに念仏やお祈りのないお葬式を、ごく親しい人だけ招いて行えば良いでしょう
理由が「弔ってほしい人は誰もいない」だったら、本当にそうなのか確認するべきです。
縁ある人も確かめましょう
親の人生においてどんな人と縁があったのかを聞いてみてください。子どもは親の縁について知らないことのほうが多いです。自分の親が死んだときに、悲しんでくれる人、弔いたいと思ってくれる人、遺族である自分たちの力になってくれそうな人、そのような人が本当にいないのでしょうか。これまで付き合いあった人の過去から現在までの関係性を聞きながら、縁を思い出してもらいましょう。会葬してもらわなくて本当にいいのかどうか、もう一度確かめたほうが良いと思います。
遺族にとり意味のあること
筆者は、お葬式はしなくてもいいもの、という論には賛同しません。死ぬと極楽浄土に行くとか、輪廻転生すると信じてはいません。死んだら土に還るだけだと思っています。ですから宗教的な理由ではありませんし、日本の文化・伝統の儀式だからという理由でもありません。大切な人を失くすと、程度はどうあれ必ず悲しみが訪れます。家族や親族はもちろんですが、故人と縁があった人も悲しみを覚えます。その悲しみを癒す場がお葬式なんだと筆者は思っています。つまりお葬式は故人のためだけではなく、遺族や縁ある人たちが故人を失った悲しみから再生するきっかけとなる場です。さらに、悲しみの中にいる遺族を力づけたい、慰めたいという遺族と縁ある人も必ずいます。これからも生きていく遺族には、それらの人の存在や繋がりは必要だと思います。