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様変わりしてきた「無縁仏」

記事公開日:2018.05.18/最終更新日:2023.05.08

読了予測:約3分

「無縁仏」と聞くと、供養する人(親族、子孫)がいなくなり、荒れ果てて誰が埋葬されているのかも分からない「お墓」をイメージする人が多いのではないでしょうか。ところが最近は、お墓に埋葬される前の無縁仏が増えているそうです。どういうことなのでしょうか。

無縁仏の定義

始めに「無縁仏」の正式な定義を確認しておきましょう。そもそもはお墓そのものではなく、「供養する人がいなくなった故人の魂」のことです。お墓には故人の魂が祀られており、故人を現世とつなぐ媒介的な存在です。そこで、お墓そのものを魂とみなして、供養・管理する人がいなくなったお墓を「無縁仏」と称しており、実際にそのままお墓のことと説明しているメディアが非常に多いです。実際にこれまでは、その考え方で良かったのですが、現代はお墓ではない無縁仏が多数生まれ始めています。それはどのようなケースなのなのでしょうか。

埋葬前の無縁仏が増加中

お墓に埋葬される前、既に供養する人が存在しないため無縁仏となってしまうケースが増えています。以前は行旅死亡人などで、身元が不明のため無縁仏として埋葬するときくらいでした。故人を葬る人が存在しない(分からない)ので、行政が代わって火葬し無縁仏として埋葬してきました。

ところが最近増えているのは、身元が分かっているのに無縁仏になってしまうというケースなのです。その要因は都市部を中心に増え続ける独居高齢者の孤独死です。行旅死亡人などではなく、住民票もあるので身元ははっきりしています。しかし、縁者が誰か分からないため、亡くなったことを伝えることもできない、火葬しても遺骨を引き取る人が誰か分からない。そのため無縁仏にするしかないのです。さらにここに輪をかけて核家族化、個人主義化など現代社会の家族・親族関係が陰を落としています。縁者が分かっても、遺骨の引き取りを拒否するケースが増加しているのです。考えてみれば、高齢者を独りで死なせてしまうというのは、その関係性が(例え親子や兄弟であったとしても)非常に希薄であったことが想像できます。行政から亡くなったことを知らされて、葬祭費用までは支払っても遺骨は引き取らないという事例もあるようです。

増える行政の負担

火葬も埋葬も費用も人手がかかります。このような独居高齢者の孤独死で、身元が分かっても縁者が分からない、縁者が分かっても引き取り(関わり)を拒否することが増えると

行政には大きな負担となります。この負担は税金で賄われているので、私たち住民の負担でもあるのです。独居高齢者の孤独死は、これからさらに増えることが予想されるため、都市部を中心に全国の自治体では対策を講じ始めています。横須賀市の「わたしの終活登録」事業がその最先端といえるでしょう。

 

民法は、子どもに親の扶養義務を定めていますが、供養する義務は定めていません。また、火葬や埋葬等に関して定めている墓地埋葬等に関する法律でも、誰が埋葬しなければいけないという義務規程はありません。誰も埋葬する人がいないか、分からない場合は行政がしなければならない、と定められているだけです。つまり、埋葬は拒否することができるのです。恐らく、自分の家族・親族の埋葬を拒否する人が、それも多数現れるということが将来発生し得ると誰一人として予想できなかったのでしょう。今後、法律や制度が、ある程度は義務化される方向性に改正される可能性があると筆者は考えています。しかし、法律で義務化を定めていないからといって、無縁仏が増え続けるのが、正しい国の在り方なのか、社会全体でもっと考える必要があると思います。

 

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