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増え続ける孤独死に対応するために行政や民間の終活サービスが登場していますね。そんな中ちょっと気になった「孤独死」と「行旅死亡人」の関係を調べてみました

記事公開日:2019.08.30/最終更新日:2023.04.07

読了予測:約4分

超高齢化社会の現代は一人暮らし高齢者の増加もあって、孤独死(孤立死)の増加は大きな社会問題となっています。行政が一人暮らし高齢者の終活をサポートする取り組みを進めるほか、民間でも一人暮らし高齢者の死後の事務を受任するサービスが登場するなど孤独死対策としての終活の有効性が認められだしています。ところで、孤独死は行旅死亡人となるという記事をよく見かけます。「行旅死亡人」は明治32年に交付された「行旅病人及行旅死亡人取扱法」に規定されているものでその定義は「住所、居所若しくは氏名が分からず、なおかつ引き取り手のない死亡者」とされています。孤独死と行旅死亡人はイコールなのでしょうか?ちょっと整理してみることにしました。

法律ではどう規定されているのか

まず、孤独死が見つかった場合は「行旅病人及び行旅死亡人取扱法」が適用されて市区町村が埋火葬するという表現は正しくありません。正しくは次に掲げる「墓地、埋葬等に関する法律第9条に基づき市区町村が埋火葬を行う」です。

第9条 死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないときは、死亡地の市町村長が、これを行わなければならない。

 前項の規定により埋葬又は火葬を行つたときは、その費用に関しては、行旅病人及び行旅死亡人取扱法(明治32年法律第93号)の規定を準用する。

市区町村は孤独死が発見されて、引き取り手がない場合には、上記第9条に基づき埋火葬を行い、その費用について「行旅病人及び行旅死亡人取扱法」の規定を適用するのであって、市区町村が埋火葬を行う根拠は「行旅病人及び行旅死亡人取扱法」ではありません。

なお、行旅死亡人と認定される要件は前述のとおりですが、家屋内で亡くなった場合でも本人と断定することができなければ(身分証明書を携行していても)行旅死亡人とみなされます。例えば周囲との付き合いを一切せず外出もほとんどしないので誰も顔を見たことがないとか、死後あまりにも時間が経過しているため本人の特定ができないといった場合ですね。孤独死とは社会から隔絶されている人が亡くなったというケースばかりではなく、一人暮らしの人が亡くなったことの全てが該当します。ですので、孤独死イコール行旅死亡人という認識は正しくはないので、ご注意ください。

孤独死の増加は地方財政を圧迫しています

引き取り手が見つからない場合だけでなく、引き取りを拒否するケースも増えているようです。この場合は引き取り手が存在するのですから行旅死亡人ではありません。一方で「埋火葬を行う者がいない」死亡者ですから、その埋火葬は「孤独死」として市区町村が行わねばなりません。いずれの場合もかかった費用の弁償は「行旅病人及び行旅死亡人取扱法」を準用して次のような手順を踏みます。

① 遺留品中に現金や有価証券があればそれを支出した費用に充てる

② ①で不足した場合は市区町村費から立て替える

③ 相続人が判明している場合は、相続人に支出した費用の弁償を請求する

④ 弁償できる相続人がいない場合、遺留品を売却して売却益を弁償に充てる

⑤ 最終的に弁償されなかった費用は、市区町村(政令指定市、中核市は自分の費用でまかなう)が属する都道府県がこれを弁償する

法律では③のように「相続人」と定義しています。つまり法定相続人ですね。つまり見つかった(引き取りを拒んだ)身寄りが、法定相続人ではなかったら請求できないことになります。また、相続を放棄されたら、法律上は相続人不在となってしまうため請求できる者がいなくなってしまいます。

行政サービスだけでなく民間サービスの拡大にも期待

一人でも多くの一人暮らし高齢者が、安心して最期を迎えることができるため、これまでも記事にしてきた神奈川県横須賀市のように、一人暮らし高齢者をサポートする行政サービスが少しずつですが全国に広がり出しています。また、民間でも「死後事務委任契約」といって、埋火葬だけでなく死後に行う必要のある事務の全てを委任することができるサービスも登場しています。死後事務委任契約についての解説は、改めて別の記事をお待ち下さい。

 

日本人の死生観か変わりつつあるといわれています。その中で葬送のありかたも大きく変わってきています。現代は、自分の死に備える、死後に備えておく、決して他人事ではなく自分事として誰もが考える必要がある時代であり、全ての人がなんらかの形で終活をこころがけることが大切だといえそうですね。