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フィギュアからダイアモンドまで…自分の生きた証の残し方

記事公開日:2016.06.03/最終更新日:2023.04.13

多くのメディアに取り上げられ、社会的にも大きな潮流になっている「終活」ですが、現代の終活ブームの起源は、エンディングノートの普及とともに始まったと考えられます。これまでの財産分与が目的だった遺言ではなく、家族に対しての感謝の気持ちなどのメッセージ、自分の葬儀に対しての希望や、遺品の種類や所在場所など、遺された家族が少しでも楽になるように準備をしておくことが「終活」の大きな要素でした。最近は、それに加えて「終活」のひとつとして「何らかの形で自分を残す」さまざまなサービスが登場しています。ここでは、「自分を残す」ということについて、何ができるのから考えてみましょう。

何を残せるのか

お金(遺産)や物(遺品)ではなく、自分の何が残せるのか、それを残すにはどのような方法があるのかを、まず考えてみます。

すがた・かたち

全身でも一部分でも、自分の外見を残すための方法です。

絵が得意な方は、自画像を描いて残す、ということはできそうです。絵が得意でない方は、プロに描いてもらうことになりますが、油絵にしても水彩画にしても芸術家に描いてもらうのは無理がありそうなので、似顔絵サービスを利用するのが良いでしょう。デジタルで作成する似顔絵なら写真から簡単にリーズナブルな価格で可能です。

  • 写真

自分の人生の歩みを、写真でつづるフォトブックとして作成することが考えられます。遺品の写真の整理は、実は遺族にとって結構な負担だそうです。故人の写真をぞんざいに扱うことはできないし、どの写真をどのように残すかも判断に迷います。そんな苦労をかけないためにも、残しておきたい写真だけ選んで整理しておけば、遺族の負担も軽くなりますね。

  • 動画

デジタル技術の進歩で動画が手軽に撮影、編集できるようになりました。ご自身でも自分の動画を作成することができますし、昔に比べればかなりリーズナブルな価格で動画制作サービスを提供している会社も増えています。プロに頼めば、照明やヘアメイクやメイクも(オプションが多いと思いますが)しっかり対応してくれます。

  • 像(銅像、彫刻)

プロの彫刻家でなくても、銅像制作サービスを提供している会社はあります。ただし、自分が生きているうちに自分の銅像をつくる、というのはあまり好まれてはいないようです。費用も200万円から1,000万円超と値がはりますし、そもそもつくった像の置き場所に困りそうですね。

  • フィギュア

3Dプリンターの普及で、数多くのサービスが展開されています。費用も小さなサイズは1体1万円くらいからとリーズナブル。大きなサイズでも10万円前後ですので、銅像に比べると現実的かもしれません。

自分の声や言葉を残したい場合は、「録音」ですね。自分の肉声をレコーダーで記録して残します。デジタルであれば、ご自身でも編集可能ですし、編集サービスを提供している会社もあります。「すがた・かたち」で紹介した動画であれば、映像だけでなく音声も一緒に残すことができます。

想い、メッセージ

動画や録音でも、自分の想い、メッセージを残すことはできますが、ここは文字で残す方法です。 遺族や関係者への感謝の気持ちなどのメッセージを、「エンディングノート」や「自分ノート」などの方法で伝えます。さまざまなサービスが展開されていますし、書店や文具店にも、日記のように書き込めばいいだけのノートが市販されています。 文字で残すもうひとつの方法は、自分史です。最近では、市販のエンディングノートの中に自分史を書くコーナーが備わっているものもありますね。メッセージだけでなく、自分の人生の歩みを書き記すものになります。出版社の自費出版部門のサービスを利用すれば、100万円くらいからで一冊の本としてまとめることができます。

自分の要素

自分のパーツというか、一部を残すという考え方です。

  • 遺灰、遺骨からダイヤモンド

全世界で2社ほど、遺灰や遺骨からメモリアルダイヤモンドを作成するというサービスを展開している会社があります。もっとも日本の場合は法律で火葬が義務付けられていることもあり、火葬後の焼骨にダイヤモンドを人工的に制作するだけの炭素が含まれていることについては、検証できていないのが現状のようです。いずれにしても、自分の死後のことなので、エンディングノートや遺言状に希望を書き記す、ということしかできませんね。

  • 「髪」から、かつら、ウィッグ

自分の髪を使用して、かつらやウィッグを作成するサービスがあります。これであれば生前に自分の髪を集めて作成し、自分の意思で残すことができます。

  • 臓器移植

もっとも社会的に価値のある残し方ではないでしょうか。自分の死後に、自分の健全な臓器が健康に難のある人の臓器として生まれ変わり、自分の代わりに生き続ける、とうものですね。

何のために、誰に残すのか

残すもの、残す方法、それぞれいくつか選択肢があることは分かりました。問題は、何のために、そして誰のために残すのか、ではないでしょうか。無論、そんなの関係なく自分が残したいものを、残したい人に残す、という考え方があることは否定しません。しかし、残された人の気持を一番に考えて残すのが最良の方法だと思います。自分が愛する人を亡くした立場だったら、何を残してほしいか、どのような方法、形で残してほしいか、それを考えることで、おのずと決まってくるような気がします。

一番残してほしいもの、そして残るもの、それはやはり「思い出」だと思います。人の心の中で永遠に色褪せることのない「思い出」。自分を残すとしたら、残った思い出が、より輝ける、蘇る、そんなものがあれば最高でしょうね。

 

最後にひとつ、気をつけてほしいことがあります。活字として書かれた、あるいは印刷された文字、プリントされた写真などは、紙の退色や酸化などで色褪せたり汚れたりしますが、なくなることはありません。ところがまだ歴史が浅いデジタルデータの保存期間は、現時点でも明確ではないということなのです。もちろん、数年や十数年は問題ないでしょうが、100年、200年残したいとお考えの方がいらっしゃれば注意が必要ですね。

もうひとつ、デジタルデータは、メディアの形式が変わると、見ることができなくなる可能性がある、ということにも気をつけましょう。この35年くらいをみても、音に関しては、カセットテープ→CD→MD→DVD(最近はメディアすらなくWAVやなどのデータ)と推移しています。映像も、VHS→ブルーレイと著しく変化しており、さらにはベータやHDDVDなど、普及しないまま終了したメディアもあります。

最新かつスタンダードとして生き残る方式でないと、せっかくの記録を見ることができないという悲しいことになりかねません。そしてデジタルの最大の欠点は、電力がないところでは見られないということです。

 

日頃は忘れてしまいがちですが、「残す」を考えるのであれば、この点も充分に検討材料にしてください。