死亡、入院、傷病など万が一のときのために加入する保険。しかし、実際にことが起こったときに、保険会社に対して行う請求手続きはかなり面倒です。とくに保険金の請求者が高齢者だった場合は、その煩わしさ故に請求を断念するケースもあると聞きます。そんな社会的な課題を解決するために、2019年5月に「一般財団法人あなたの医療」が設立されて、保険金請求手続き代行の実証実験が進められていす。
こんなに大変な請求手続き
保険金の支払い事由が発生した場合に、受取人本人が次の事を契約している保険会社に連絡しなければなりません。
死亡保険の場合の連絡事項
① 証券番号
② 被保険人(故人)の名前
③ 亡くなった日
④ 死因(病名・事故内容など)
⑤ 保険金受取人の名前
⑥ 保険金受取人の連絡先
⑦ 死亡前の入院・手術の有無
医療保険の場合の連絡事項
① 証券番号
② 被保険人の名前
③ 入院・手術・通院などの理由
④ 事故の場合は事故にあった日
⑤ 入院の場合は期間(入院日と退院日)
⑥ 手術の場合は手術日
⑦ 手術の名称
⑧ 通院の有無と通院日数
見ただけで既に嫌になりそうですね。そしてさらに、請求時には次の書類を用意しなければいけません。
死亡保険の場合の必要書類
① 保険証券(証券番号)
② 死亡保険金請求書
③ 保険金受取人の戸籍謄本
④ 保険金受取人の印鑑証明書
⑤ 被保険者の住民票
⑥ 死亡診断書
医療保険の場合の必要書類
① 保険証券(証券番号)
② 入院・手術・治療等の診断書
③ 事故の場合は事故状況報告書
複雑かつ大量な書類が必要になるのですが、この中でも最も厄介なのが、「診断書」なのです。死亡、医療ともに医療機関の診断書が必要なのですが、現状では診断書を発行してもらうためには直接医療機関に赴いて発行の依頼を行い、そして一般的には後日再び出向いて受領する、という実に煩わしい行為が必要となっています。
神奈川県の財団法人が実証実験を開始
この一連の保険金請手続きは、請求者が高齢者だけでなく、寝たきりだったり、闘病しながら働いている人だったりする場合には、著しい負荷となってしまいます。そこで、保険金請求手続きを自ら行うことが難しい人でも、保険金の請求ができるように請求代行という新しいサービスを考案したのが、神奈川県に設立された「一般財団法人あなたの医療」というわけです。現在も実施中の実証実験には、大手をはじめ日本の主だった保険会社15社が参画しています。保険会社にとっても、書類などの精度にばらつきがある個人からの請求よりも、手続きを熟知しているプロフェッショナルによるほうが、事務手続きの負荷を減らすことができるので、まさにWIN-WIN-WINの関係になるわけです。
ワンストップで請求手続きができる
現在は新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、実証実験は一時休止しているようですが、実験におけるフローは概ね次の図のように、財団と委任契約を締結すれば保険金の支払いまで何もする必要がないという素晴らしいスキームのようです。なお、発生する手数料は死亡保険で5万円、医療保険で5千円となっています。
社会ニーズを汲み取った素晴らしいサービスだと思います。実証実験の再開と成功、そして早期の本サービスのリリースを期待したいですね。