終活Style ごじょクル

冠婚葬祭に関する豆知識など、
様々なお役立ち情報をお届けします。

powered by ごじょクル
  • Facebook
  • Twitter

終活の選択肢の1つ。増加傾向にあるらしい遺贈

2020年11月09日

2019年に亡くなった昭和から平成を彩った大女優、八千草薫さんの豪邸が解体されたという女性セブンの報道をネットのニュースで目にしました。八千草さんはお子さんがおらず、夫には先立たれた一人暮らしでした。亡くなる前には、遺言状に自宅は“そのままの形にして残してほしい”と書き残し、生前に世話になった人3人に対して遺贈をしたのだそうですが、残念ながら遺言書に記された希望どおりにいかなかったのです。今回は、八千草さんの願いが叶わなかった理由を考えながら、遺贈について調べてみることにしました。

遺贈と相続

人が亡くなった時に遺された財産(負債も含む)を譲り受ける方法として最も一般的なのは相続で、故人の法定相続人が財産を譲り受けるものです。なお、相続は民法が定める法定相続分による相続と、遺言書により故人が決めた相続割合による相続があります。遺贈とは、法定相続人以外に故人の財産を譲ることで、遺言書に明記されていることが条件となります。なお、遺贈することができるのは人(法人も含まれます)で、その遺贈は負担付遺贈(民法1002条)を除いて、無償によるものとされています。

ペット のための 終活 その2 負担付遺贈

ところで相続財産は、法定相続人がいない場合は相続する人が不在であるために、遺された財産の全ては国庫に収納されてしまいます。八千草さんのケースのように、遺言書に遺贈の記載をすることで初めて財産を国ではない誰か、遺贈を受ける人(受遺者)に遺すことができるのです。

遺贈と相続税

八千草さんは遺言書に自宅を世話になった3人に遺贈すると記したことで、自宅は国庫に収納されることはなく、生前の願いどおりにそのままの形で残せると考えていました。その願いが叶わなかった理由は相続税です。遺贈とは、遺言書に記載された譲渡といっても良いので、譲り受けた受遺者は相続税を支払う義務が生じます。この場合、3人が受遺した比率に応じてそれぞれ相続税が課されることになります。3人とも莫大な資産があり、苦もなく税金を納めることができたのなら問題なかったのでしょうが、一般的には都心にある豪邸の相続税を支払うことは容易ではありません。そこで、豪邸をそのままの形で売却しそのお金で税金を納めようとしたのだそうですが、希望通りの買い手が見つからず、やむを得ずに「そのままの形で残す」という条件を取り下げて売却することができたということです。相続税には納入する期限があります。期限内に納めることができないと延滞税を課せられます。今回は延滞税もかなりの額になるのでしょう。3人の受遺者は八千草さんの願いを叶えることができない悔しさと悲しさを胸に秘めて泣く泣く売却手続きをしたのであろうことが想像できます。

このように遺贈を受けた場合には相続税が発生します。しかも相続よりも1.2倍の税金が課されるのです。さらに通常の相続は基礎控除(2015年の相続税法改正により3,000万円+法定相続人の数×600万円)が認められますが、遺贈には控除は適用されません。さらに、今回のケースのような不動産の場合は、不動産取得税、法務局に登録申請を行う際にかかる登録免許税(相続より高い税率)もかかります。つまり、財産を相続した法定相続人よりも、遺贈を受けた受遺者に課せられる税金は高額になるということは理解しておく必要があります。

相続税が非課税になる場合

故人から財産の遺贈を受けた場合に、相続税が非課税となる場合があります。それは遺贈を受ける対象が、公益法人と認定NPO法人の場合です。それは、この遺贈という仕組みの根幹にある立法理念が、公共の福祉や、社会に対して財産を還元させるという点にあるからだと筆者は考えています。八千草さんも生前、行政(世田谷区)に遺贈を持ちかけたらしいですが、住宅を取り壊し更地にするという条件だったために断念したのだそうです。もしかすると認定NPO法人に話を持ちかけて、そのままの形で何かの施設として活用してもらう、という方法を模索していたら、例えば介護施設や美術館など、残せたのかもしれないですね。ただ疑問は残ります。遺言書はおそらく公正証書遺言で作成には弁護士が関わっていたでしょうし、3人の受遺者とも生前によく話し合っていたと思うのです。であれば、遺贈後の相続税のことが全く念頭になかったということはないように思うのですが、何か想定外のことがあったのかもしれないですね。

遺贈を相続税の節税として活用する場合

遺産を相続するときは先に記した基礎控除を上回った額が課税対象となります。そこで、基礎控除を上回った分を遺贈することで相続税の負担を少なくすることができます。正しくは税負担と遺贈する額との見合いとなりますので、個別に試算する必要はありますが、法定相続と公益法人や認定NPO法人に対する遺贈を上手く組み合わせることで、相続人の課税額が減る(相続する財産も減りますが)と同時に、社会貢献ができることになります。このような考えを持つ人が増えているのでしょう、遺贈自体も増えているようです。終活における財産の遺し方の1つとして、覚えておいていただけると良いでしょう。